仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2024年4月30日号

 

2024年4月26日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Gata Only - FloyyMenor, Cris MJ

 2 Beautiful Things - Benson Boone

 3 Position - Franglish

 4 The Sound Of Silence - Disturbed

 5 Petit génie - Jungeli, Imen ES, Alonzo

 6 Ceux qu'on ètait - Pierre Garnier

 7 I Like The Way You Kiss Me - Artemas

 8 Oh qu'elle est belle - JuL, Dystinct

 9 Temps en temps - Zola & Koba Lad

 10 Mami Wata - Gazo x Tiakola

 

【アルバムチャート】

 1 The Tortured Poets Department - Taylor Swift

 2 Remix XL - Mylène Farmer

 3 Chambre 140 (Part.3) - PLK

 4 Pyramide - Werenoi

 5 Décennie - JuL

 6 Cowboy Carter - Beyoncé

 7 Saudade - Green Montana

 8 Papercuts-Singles Collection 2000-2023(1CD) - Linkin Park

 9 La route est longue - JuL

 10 à2 à3 - Vianney

 

 シングルチャート1位は、前週までのBenson Boone(ベンソン・ブーン)に代わってチリの2人組、FloyyMenorとCris MJによるレゲトンナンバー「Gata Only」(前週5位)が浮上しました。スペイン語の曲がフランスでシングル1位を奪取するのは、2023年10月20日付でのスペインのIñigo Quintero(イニーゴ・キンテロ)が歌う「Si No Estás」以来になります。  今週シングルトップ10に初登場したのは、マルセイユのラップの帝王JuLがDystinctと組んだ「Oh qu'elle est belle」で8位。Dystinctはベルギー出身、モロッコ系の25歳のラッパーで2021年、「Mon voyage」でアルバムデビュー。ヒップホップもポップスも、ジャマイカのレゲエも、アルジェリア起源のライ(raï)もレパートリーとしている人です。

 

Taylor Swift

 今週のアルバムチャート1位はご存知、現在のアメリカ最大のポップアイコン、Taylor Swift(テイラー・スウィフト)の4月19日発売の11枚目のスタジオ・アルバム「The Tortured Poets Department」でした。訳せば「苦悩する詩人たちの会」という、昔々のセンシティブな文学青年、文学少女っぽいタイトルです。

 Vianney(ヴィアネ)が2023年11月に出したコラボアルバム「à2 à3」が10位に再浮上しました。

 

Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)


Mylène Farmer

 今週のチャートに、お久しぶりのミレーヌ姐さんご登場。Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)の「Remix XL」がアルバムチャートで2位に入りました。4月19日リリース。しかし、彼女がアルバムを出したらフランスのチャートではいつも「初登場1位」だったのが、今回はテイラー・スウィフトに阻まれて2位に甘んじました。妖しき美魔女も62歳。これも時の流れなのか? それとも、テイラーちゃんがそれだけの超大物ゆえなのか?

 あらためてプロフィールをご紹介しますと、1961年9月、カナダ・ケベック州モントリオール近郊のPierrefonds(ピエルフォンド) の生まれ。本名はMylène Gautier(ミレーヌ・ゴーティエ)で、ステージネームのFarmer(ファルメール) は、その悲劇的な生涯がジェシカ・ラング主演の映画『女優フランシス(Frances/1982年)』で描かれた1930年代に活躍したアメリカの女優、Frances Farmer(フランシス・ファーマー)に由来しています。

 フランスに渡ってパリの演劇学校に通った後、1984年、22歳でシングル「Maman a tort/My Mum Is Wrong」(ママは間違っている)でレコードデビューします。ミレーヌ・ファルメールの名が世界に広まったのは、MTVが出現した80年代にジャストフィットした短編映画仕立てのミュージックビデオの功績が大で、1987年の「Sans contrefaçon」がまず話題になりました。日本で言えばフランス文学者の澁澤龍彦氏の作品を彷彿とさせる「倒錯の世界」を描いたビジュアルの効果もあいまって、熱狂的かつ秘密結社的なファンを獲得していきます。

 その後、新作アルバムを出せばフランスでは必ず1位を取り、コンサートツアーに出ればチケットは常に入手困難というフレンチポップスの「ダークサイドの女王」的地位を確立。近年ではスリラー映画に出演したり、カンヌ映画祭で審査員を務めるなど、活躍の場をひろげています。

「Remix XL」はオリジナルのスタジオアルバムではなく「リミックス・アルバム」で、その系統では1992年の「Danse Remix」、2003年の「RemixeS」に続く3枚目。「Sans contrefaçon」「Désenchantée」「C'est une belle journée」「Du temps」など過去のヒット曲の数々をテクノ/エレクトロ・サウンドで再録音(リミックス)して、全21曲で構成されています。

 今回はオープニングチューンの「Libertine」をお聴きください。もともとは1986年に出したファーストアルバム「Cendres De Lune」(月の灰/最高39位)に収録されている3枚目のシングル曲で、同年、SNEPシングルチャートで彼女としては初の1位にのぼりつめた作品です。

 歌詞(paroles)では「Je je, suis libertine. Je suis une catin. Je je, suis si fragile. Qu'on me tienne la main(拙訳:私は自由奔放な女。私は売春婦。私はとても壊れやすい。誰か私の手をとって)」と、まさにミレーヌ姐さんらしいフレーズをリフレインします。作詞はローラン・ブトナ (Laurent Boutonnat)。当時、彼女は24歳でした。

※libertine(リベルティーヌ)という言葉は「誰とでも寝る女」というニュアンスをはらんでいます。そんなこと、フランス語の先生は聞いても教えてくれないと思いますが……。

 

Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール) - Libertine

 

では、また来週

À la semaine prochaine!