仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2024年4月23日号

 

2024年4月19日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Beautiful Things - Benson Boone

 2 Petit génie - Jungeli, Imen ES, Alonzo

 3 The Sound Of Silence - Disturbed

 4 Ceux qu'on ètait - Pierre Garnier

 5 Gata Only - FloyyMenor, Cris MJ

 6 Temps en temps - Zola & Koba Lad

 7 I Like The Way You Kiss Me - Artemas

 8 Position - Franglish

 9 Texas Hold'Em - Beyoncé

 10 Mami Wata - Gazo x Tiakola

 

【アルバムチャート】

 1 Cowboy Carter - Beyoncé

 2 Papercuts-Singles Collection 2000-2023(1CD) - Linkin Park

 3 Chambre 140 (Part.3) - PLK

 4 AMBITION - Guy2Bezbar

 5 Pyramide - Werenoi

 6 On Deep River - Mark Knopfler

 7 Saudade - Green Montana

 8 Décennie - JuL

 9 La route est longue - JuL

 10 Carré - Werenoi

 

 シングルチャートは今週もBenson Boone(ベンソン・ブーン)の「Beautiful Things」が1位を堅持しました。トップ10へのニューエントリーは5位の「Gata Only」で、スペイン語によるレゲトンナンバーをデュエットするのはFloyyMenor(フロイメナー)とCris MJ(クリス・MJ/本名Christopher Álvarez)という南米チリの男性シンガー2名です。FloyyMenorのソロ・ヴァージョンは2023年12月21日、デュエット・ヴァージョンは2月2日にリリースされました。TikTokで火がついて中南米各国や全米ラテン・チャートを席巻し、ビルボード全米チャートでも上位に食い込み、スイスで1位、スペインで4位になるなどヨーロッパへ進攻中です。

 アルバムチャート1位はビヨンセ(Beyoncé)の「Cowboy Carter」が、2位にアメリカのオルタナティブ・メタルロックの一番星、Linkin Park(リンキン・パーク)の2000年以降のベスト盤「Papercuts-Singles Collection 2000-2023(1CD)」(4月12日リリース)が、それぞれ入りました。

 

Mark Knopfler

 80年代の第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの旗手の一角「ダイアー・ストレイツ(Dire Straits)」。そのフロントマンとしてブイブイ言わせていたMark Knopfler(マーク・ノップラー)の4月12日発売の10枚目のソロアルバム「On Deep River」が今週、アルバム6位にランクインしました。スコットランド・グラスゴー生まれの74歳。父親はナチス・ドイツに追われ英国に移住したユダヤ系ハンガリー人の建築家でした。10位にはパリの東の郊外にあるモントルイユ(Montreuil)出身のWerenoi(ウェルノワ)が2023年3月に出したアルバム「Carré」が再浮上し、5位の「Pyramide」と合わせた2作がトップ10に入っています。

 

Guy2Bezbar(ガイ2ベズバル)


Guy2Bezbar

 Guy2Bezbar(ガイ2ベズバル)のセカンドアルバム「AMBITION」が今週のアルバムチャートで4位に入りました。2023年11月17日リリースで、同月24日付アルバムチャートで3位になりましたから、5カ月ぶりのトップ10への再浮上です。きっかけは新曲「TAPIE」(アルバム収録曲ではありません)が4月12日にリリースされたことでした。

 ガイ2ベズバルは1997年12月3日、パリ18区生まれの26歳。本名はGuy-Fernand Kapataといい、コンゴ系のラッパーです。実は彼は現役のサッカー選手でもあり、14歳でイングランド・プレミアリーグのウエストハム・ユナイテッドに誘われてテストを受けたことがあるそうで、23-24シーズンはパリ南東郊外ヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県イヴリー=シュル=セーヌ(Ivry-sur-Seine)に本拠があるフランス3部リーグ(National 3)Union sportive d'Ivry(USイヴリー)に所属。このクラブの社長はPSGのエムバペ選手のおじさんだそうです。24-25シーズンは所属先未定ですが、移籍市場は9月1日まで開いています。

 このブログは「L'Equipe(レキップ)」ではないのでこれぐらいにしまして、ミュージシャンのほうのキャリアは2015年、17歳でヒップホップのミックステープを出したことに始まります。Hamza、ZKR、Taycら有名ラッパーも参加して2021年11月にリリースされたファーストアルバム「Coco Jojo」は、SNEPアルバムチャートで最高9位になりました。同年同月、リーグ・アンの「ル・クラスィク」にあやかってパリとマルセイユのラッパーがバトルする企画盤「Le classico organisé」(最高2位)に、パリ側で「参戦」しています。2022年11月には、パリ17区出身で同年齢のLetoとの共同制作・連名で出したアルバム「Jusqu'aux étoiles」が最高6位になっています。ラッパーとしては、すでに中堅どころです。

 フランスの都市の郊外(Banlieue)に住むアフリカ系移民の男の子が若くして大金を稼ぐ手段は「サッカーの選手になるか、ラッパーになるか、ギャングになるか」だと言われるのですが、Guy2Bezbarはそのうちの2つにアプローチできたわけですね。

 アルバム「AMBITION」にはSDM、Jey Broenie、Josman、Koba Ladらが参加していますが、今回はそのタイトルチューンをお聴きください。タイトルの意味は「野心」「野望」で、アフリカ系の青少年に野心を持て、レベルアップしろとあおっています。歌詞で繰り返す「viser la boca」とは「ゴールを狙う」という意味。「boca」はスペイン語で「口」という意味ですが、サッカーではゴールマウスをこう言います。う~ん、やっぱり彼はサッカーの選手なのでした。

※アルゼンチンの有名サッカークラブ、ボカ・ジュニアーズの名は、首都ブエノスアイレスの海に面した河口部の港湾地区「La Boca」に由来し、ゴールマウスのことではありません。港町のボカ地区はアルゼンチン・タンゴ発祥の地として知られています。

 

Guy2Bezbar(ガイ2ベズバル) - AMBITION

 

では、また来週

À la semaine prochaine!