仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2024年4月9日号

 

2024年4月5日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Beautiful Things - Benson Boone

 2 Ceux qu'on ètait - Pierre Garnier

 3 Petit génie - Jungeli, Imen ES, Alonzo

 4 Texas Hold'Em - Beyoncé

 5 Temps en temps - Zola & Koba Lad

 6 Position - Franglish

 7 The Sound Of Silence - Disturbed

 8 Mami Wata - Gazo x Tiakola

 9 Lose Control - Teddy Swims

 10 I Like The Way You Kiss Me - Artemas

 

【アルバムチャート】

 1 Cowboy Carter - Beyoncé

 2 Chambre 140 (Part.3) - PLK

 3 Pyramide - Werenoi

 4 Les Enfoirés 2024, On a 35 ans! - Les Enfoirés

 5 Bushi Tape 3 - Bu$hi

 6 Hope On The Street Vol.1 - J-HOPE

 7 Eternal Sunshine - Ariana Grande

 8 Heaven:X:Hell - SUM 41

 9 La Symphonie des éclairs - Zaho de Sagazan

 10 Héritage - Dadju,Tayc

 

 シングルチャート1~3位は前週と同じ顔ぶれ。「The Sound Of Silence」が7位にチャートインしたDisturbed(ディスターブド)は1994年にアメリカ・シカゴで結成されたヘヴィメタルのバンド。2000年にアルバム「The Sickness」でメジャーデビューし、あのオジー・オズボーンをして「メタルの未来」と呼ばせました。10位に初登場のArtemas(アルテマス)はUKの24歳のシンガーソングライターでキプロス系。高校生の時に今は亡きグランジロックのカリスマ、ニルヴァーナのカート・コバーンから強い影響を受けてミュージシャンを志したそうです。3月19日発売の「I Like The Way You Kiss Me」はUKチャートでは最高6位です。

 

Beyoncé

  今週のSNEPアルバムチャート1位に、アメリカ・ヒューストン出身の歌姫Beyoncé(ビヨンセ)の3月29日リリースのニューアルバム「Cowboy Carter」が登場しました。カントリーをベースに南部のサザンロック、R&B、ゴスペル、フォークからヒップホップまで「これがアメリカの音楽だ!」という構成の意欲作です。その収録曲の「Texas Hold'Em」は前週のシングルチャート6位から今週は4位へとランクアップ。6位のJ-HOPEは韓国のBTS(防弾少年団)のメンバーで、「Hope On The Street Vol.1」は得意のストリートダンスを前面に押し出した4月3日発売の6曲入りミックステープ。8位のSUM 41(サム・フォーティーワン)はカナダ・オンタリオ州で結成されたパンク/ヘヴィ・メタルのベテランバンドです。2023年5月に解散を発表しており現在ファイナルツアー中。彼らが3月29日に出した「Heaven:X:Hell」(天国対地獄)がラストアルバムになります。

 

Bu$hi(ブシ)


Bu$hi

 今週のアルバムチャート5位に、3月29日リリースの5枚目のミックステープ「Bushi Tape 3」が初登場したBu$hi(ブシ)は、2000年2月にリヨン(Lyon)で生まれた24歳のラッパーです。ルーツはマダガスカル沖のインド洋に浮かぶフランス海外県、レユニオン(Réunion)島で、少年時代をここで過ごしています。リヨンのラップグループのSaturn Citizen、続いて2017年からLyonzonというグループに在籍しながら、2019年にソロデビューしています。

 ステージネームは「Bushido」(武士道)とも名乗りましたが、すでにドイツに同名のベテランラッパーがいたので、現在はもっぱら「Bu$hi」としています。もちろん日本の昔の武士にちなんだネーミングです。ヨーロッパでは映画、アニメ、ゲームで触れる「サムライ」や「ブシ」は、中世の騎士と似たようなイメージで「クールなもの」「カッコいいもの」とされています。映画『ラストサムライ』の渡辺謙さんや真田広之さんも武士なら、志村けんさんの「バカ殿様」も、大名ですから身分は武士なんですけれどね……。

(『ラストサムライ』は、トム・クルーズ演じた主人公が、最後の将軍、徳川慶喜の要請で皇帝ナポレオン3世が日本に派遣し、戊辰戦争の最後の戦い、箱館戦争に旧幕府側で参加した陸軍大尉ジュール・ブリュネ Jules Brunet がモデルなので、フランスでも話題になりました)

 ミックステープを出すたびにTiakola、La fèveら著名ラッパーとコラボ。渡米してドレイクやセントラル・シー、アイス・スパイスなどあちらの大物とも共演したフランスのヒップホップシーンの若きサムライ、Bu$hi。新作「Bushi Tape 3」は、最新作シングル「What We Doing!? / Qu'est-ce qu'on fait!?」でフューチャーしているQuavoや、Dinos、Redda、SDMらの参加を得て、独特の世界をさらに深めていますが、その収録曲からオープニングチューンの「Révolution」をお聴きください。

 その歌詞(paroles)では「Si j'saute de la tour Eiffel sans parachute, l'lendemain y a les fans qui sautent.(拙訳:もしも俺がパラシュートなしにエッフェル塔から飛び降りたら、その翌日、飛び降りるファンがいるだろう)」とリフレインします。う~ん、革命(Révolution)の指導者とは、そんなカリスマ性とプライドを持つものですか?

 この部分はNHKの現代史ドキュメンタリー番組「映像の世紀」第1集で日本でも知られるようになったエッフェル塔飛び降りマン、オーストリアの発明家フランツ・ライヒェルト(Franz Reichelt/1912年決行)の故事をイメージしているのかもしれません。

 

Bu$hi(ブシ) - Révolution

 

では、また来週

À la semaine prochaine!