仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2024年3月26日号

 

2024年3月22日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Beautiful Things - Benson Boone

 2 Ceux qu'on ètait - Pierre Garnier

 3 Petit génie - Jungeli, Imen ES, Alonzo

 4 Position - Franglish

 5 Pyramide - Werenoi

 6 Lose Control - Teddy Swims

 7 Mami Wata - Gazo x Tiakola

 8 I Love You - Dadju, Tayc

 9 Texas Hold'Em - Beyoncé

 10 Hypé - Aya Nakamura ft.Ayra Starr

 

【アルバムチャート】

 1 Les Enfoirés 2024, On a 35 ans! - Les Enfoirés

 2 Pyramide - Werenoi

 3 Je me souviens d'un adieu - Michel Sardou

 4 Chambre 140 (Part.3) - PLK

 5 Eternal Sunshine - Ariana Grande

 6 Plus fort que l'orage - Bekar

 7 Triptyque:Lueurs Célestes - MC Solaar

 8 Héritage - Dadju,Tayc

 9 La Symphonie des éclairs - Zaho de Sagazan

 10 LA MELO EST GANGX - Gazo x Tiakola

 

 シングルチャートのトップ10は前週と同じ顔ぶれで順位が入れ替わっただけ。1位に「アメリカン・アイドル」に出場したBenson Boone(ベンソン・ブーン)の「Beautiful Things」が上がり、「スター・アカデミー」優勝曲のPierre Garnier(ピエール・ガルニエ)「Ceux qu'on ètait」は2位に後退しました。ともにテレビ番組で人気を得た若手です。

 

Bekar

 アルバムチャート6位「Plus fort que l'orage(嵐よりも強く)」は、2023年3月31日に発売されたアルバムの約1年後のチャート再浮上。Bekar(べカール)はスペインの首都マドリードで生まれリールで育った26歳のラッパー。2023年4月11日号で少しご紹介しています。

 3月15日発売の「Triptyque:Lueurs Célestes」が今週のアルバムチャートで7位に入っているMC Solaar(エムセ・ソラール)は、セネガルの首都ダカール生まれの55歳のベテランラッパー。両親はチャド出身で、生後すぐヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県ヴィルヌーヴ=サン=ジョルジュ(Villeneuve-Saint-Georges)に移住。1990年に21歳でメジャーデビューしました。フレンチラップの今日の隆盛の基礎を築いた功労者の一人とされています。新作アルバムのタイトルは「三連祭壇画:天の光」という意味で、Triptyqueとはキリスト教の聖堂の祭壇にある、受胎告知とかゴルゴダの丘での受難などを描いた屏風のような3枚パネルの宗教画のこと。2024年は3月29日が聖金曜日で、31日が復活祭(Pâques)です。

 

Michel Sardou(ミシェル・サルドゥ)


Michel Sardou

「Je vais t'aimer(君を愛す/1976年)」「Je vole(青春の翼/1978年)」「En chantant(歌とともに/1978年)」「Les lacs du Connemara(コネマラの湖/1981年)」などのヒット曲で日本でも知られているフレンチポップスの大御所。かつてDelpech(デルペッシュ)、Fugain(フュガン)とともに「フランス三大ミシェル」と並び称されたMichel Sardou(ミシェル・サルドゥ)のアルバム「Je me souviens d'un adieu」が、今週のSNEPアルバムチャートで3位に躍り出ました。アルバムと同名のコンサートツアーが行われており、オールドファンにとってはその健在ぶりが喜ばしいところでしょうか?

 1947年1月にパリで生まれ、自身の大ヒット曲「La maladie d'amour(恋のやまい/1973年)」の歌詞では恋のやまいに感染する最終年齢になる御年77歳。マルセイユ出身のコメディアンの祖父、歌手の祖母、俳優兼歌手の父親、女優の母親という芸能一家の出で、16歳で高校をやめて父親が経営するモンマルトルのキャバレーで働き始め、1965年に18歳でレコードデビューします。この頃、一緒に作曲やレコーディングを行っていたのがミシェル・フュガンでした。

 早世したClaude François(クロード・フランソワ)と同様に60年代のアメリカンポップスに大いに影響を受け、1944年8月にパリを解放したアメリカ軍に感謝する内容の歌詞の曲を出して当時のド=ゴール大統領が不快感をあらわしたというエピソードが伝わっています。フランスでは、ナチス・ドイツ占領下にあったパリを解放したのは連合軍ではなくレジスタンスだとされているからです。それでも1968年の五月革命ではド=ゴールを支持し、以来、現在に至るまで「保守派の大物」として知られています。1972年に五月革命賛歌の「Que Marianne était jolie(美しかったマリアンヌ)」を出したミシェル・デルペッシュ(2016年死去)とは、政治的なスタンスでは対極にあります。

 ミシェル・サルドゥは1970年、ファーストアルバム「J'havete en France」の収録曲「Les bals populaires」がヒットチャートで1位を取ったことでフレンチポップス第一線のシンガーソングライターの地位を不動のものとし、70~80年代にはヒット曲を連発。日本でも布施明さんや、フランスでもレコードデビューした沢田研二さんがカヴァーしています。

 ニューアルバムの「Je me souviens d'un adieu(拙訳:私は別れを忘れない)」は2023年、アミアン(Amiens)にあるコンサート会場「Zénith(ゼニス)」で録音されたライブ盤で、過去のヒット曲や本人のお気に入りの曲、先輩クロード・フランソワの曲など計24曲がダブルCDに収録されています。その中からタイトルチューンを29年前のライブ動画でお聴きください。

 

Michel Sardou(ミシェル・サルドゥ) - Je me souviens d'un adieu

 

では、また来週

À la semaine prochaine!