仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2024年3月12日号

 

2024年3月8日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Ceux qu'on ètait - Pierre Garnier

 2 Pyramide - Werenoi

 3 Beautiful Things - Benson Boone

 4 Petit génie - Jungeli, Imen ES, Alonzo

 5 I Love You - Dadju, Tayc

 6 Lose Control - Teddy Swims

 7 Maudit - Werenoi

 8 Mami Wata - Gazo x Tiakola

 9 Iñigo Quintero - Si No Estás

 10 Texas Hold'Em - Beyoncé

 

【アルバムチャート】

 1 Les Enfoirés 2024, On a 35 ans! - Les Enfoirés

 2 Pyramide - Werenoi

 3 Exit - Luther

 4 Chambre 140 (Part.3) - PLK

 5 Garçon - Luther

 6 Héritage - Dadju,Tayc

 7 La Symphonie des éclairs - Zaho de Sagazan

 8 Solsad - Zamdane

 9 AD VITAM ÆTERNAM - Booba

 10 The Mandrake Project - Bruce Dickinson

 

 シングルチャート1位は今週もPierre Garnierの「Ceux qu'on ètait」。10位に浮上した2月13日リリースの「Texas Hold'Em」は、テキサス州ヒューストン出身の歌姫Beyoncé(ビヨンセ)がダンスミュージックから一転、カントリーに挑戦した新曲。ひょっとして「もしトラ」? PVは10日にアカデミー賞を逃したヴィム・ヴェンダース監督の1984年の名作映画『パリ、テキサス』へのオマージュ。テキサス州Paris(パリス)はオクラホマ州との州境の近くにあり、ご愛嬌でエッフェル塔のレプリカが建っていて、市内を走るバスをメトロ(Métro)と言います。

 今週のアルバムチャートは「Les Enfoirés 2024, On a 35 ans!」がやっぱり初登場1位。Sony Musicから1月のボルドーでの公演を収録した2枚組ライブCDとDVDが3月2日に発売されました。「フランスの良心」レザンフォワレも今年で35周年です。

 

Bruce Dickinson

 アルバムチャート10位にBruce Dickinson(ブルース・ディッキンソン)の3月1日リリースの18年ぶり7枚目のソロアルバム「The Mandrake Project」が登場。80年代から活躍するUKヘヴィメタシーンの雄Iron Maiden(アイアン・メイデン)のフロントマンも65歳ですが、2年前にギリシャのコンサート会場で火をつけた観客を怒鳴りつけるなど、いまだ意気軒昂。9月再来日予定のアイアン・メイデンのバンド名の由来は、東京・神田駿河台の明治大学博物館刑事部門常設展示室に行くと無料で見学できます。

 

Luther(ルセール)


Luther

 今週のSNEPアルバムチャートで、3月1日に出した新作「Exit」が3位、2023年3月30日に出した前作「Garçon」が5位に同時ランクインしたLuther(ルセール)は、今年1月2日号でご紹介したLa Fève(ラ・フェーヴ)とともに、フランスの音楽メディアでいま「ニューウェーヴ・ラップ」と紹介される23歳の覆面ラッパーです。

 2000年、中世の教皇庁や、童謡に歌われた橋で有名な南仏アヴィニョン(Avignon/ヴォクリューズ県Vaucluse/84)生まれ。西部アキテーヌ地方のドゥー=セーヴル(Deux-Sévres/79)県ニオール(Niort)で育ちました。2018年、18歳でラッパーとしてデビュー。2020年にシングル「Montre les dents」(歯を見せろ)、ファーストアルバム「Trame」、EP「Idd」を続けざまに出して注目され、2023年のセカンドアルバム「Garçon」は500万回以上再生されて若い世代に熱く支持されました。同年の3曲入りEP「Ami」も同様にヒットしています。

「Garçon」とともに初めてSNEPチャートでトップ10入りを果たした新作アルバム「Exit」収録曲から、先行シングルリリースされた「Rouge Goron」をお聴きください。タイトルのGoronは任天堂のゲーム「ゼルダの伝説シリーズ」のキャラクターからきているようですが、歌詞(paroles)は100年前のシュルレアリスムの「自動筆記(Automatisme)」を連想させるような難解さで、「Quasimodo(カジモド)」「Hiroshima」「Uber Eats」などの言葉が前後の脈絡なくランダムに飛び出します。そんな「考えるな。感じるんだ」(ブルース・リー/マスター・ヨーダ)な音楽がニューウェーヴなのでしょうか? ルセールは「Geek(ギーク)=オタク」を自称しています。

 メディアで「世代を超えるラッパー未来形」「ネット世代の新たな天才」などと評される彼は、80~90年代にフランスで放送された日本のアニメに大きな影響を受けた「クラブ・ドロテ(Club Dorothée)世代」ではありませんが、「ドラゴンボール」の大ファンを自認し、原作者、鳥山明氏の先日の訃報に接し「X(旧ツイッター)」に追悼メッセージを寄せました。

 

Luther(ルセール) - Rouge Goron

 

では、また来週

À la semaine prochaine!