仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2024年2月20日号

 

2024年2月16日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Ceux qu'on ètait - Pierre Garnier

 2 Dolce Camara - Booba

 3 Petit génie - Jungeli, Imen ES, Alonzo

 4 Saga - Booba

 5 I Love You - Dadju, Tayc

 6 6G - Booba

 7 Rebel - Booba

 8 16.02.2024 - Werenoi

 9 Si No Estás - Iñigo Quintero

 10 Sport Billy - Booba

 

【アルバムチャート】

 1 AD VITAM ÆTERNAM - Booba

 2 Chambre 140(Part.3) - PLK

 3 La Symphonie des éclairs - Zaho de Sagazan

 4 Le chant est libre - Patrick Fiori

 5 Mode opératoire Vol.1 - ZKR

 6 Décennie - JuL

 7 La route est longue - JuL

 8 Frères ennemis - Zola & Koba LaD

 9 Vultures 1 - Kanye West/Ty Dolla $ign

 10 LA MELO EST GANGX - Gazo x Tiakola

 

 今シーズンの「Star Academy(スター・アカデミー)」優勝曲、Pierre Garnier(ピエール・ガルニエ)の「Ceux qu'on ètait」が堂々シングルチャート1位を占めました。「Petit génie」は3位に後退。Iñigo Quinteroの「Si No Estás」は9位に後退。Booba(ブーバ)のニューアルバム「AD VITAM ÆTERNAM」収録曲から「Dolce Camara」が2位、「Saga」が4位、「6G」が6位、「Rebel」が7位、「Sport Billy」が10位と、シングルチャートのトップ10に5曲が入りました。

Booba

 アルバムチャート1位にBooba(ブーバ)の2月9日にリリースされた11枚目のスタジオアルバム「AD VITAM ÆTERNAM」登場。Boobaについての詳細は2020年5月19日号をご覧ください。アルバムタイトルはボルドー産の赤ワインのブランド名でもありますが、ラテン語で「永遠の生命へ」という意味で、カトリック、プロテスタント共通の祈祷文「使徒信条(クレド/Credo)」の末尾の「永遠の生命を信じます。アーメン(vitam aeternam. Amen)」が由来のようです。キリスト教では2月14日、復活祭前の「四旬節(カレム/Carême)」に入りましたが、かつてオルリー空港でKaaris(カーリス)と派手な大乱闘を演じた武闘派ラッパーも、年齢を重ねて、過去を悔い改めているのでしょうか?

 アルバム3位には2月9日に授賞式が行われた「ヴィクトワール音楽賞2024」で年間最優秀アルバム賞を受賞したZaho de Sagazanの「La Symphonie des éclairs」が記念のように再浮上。2023年3月に出したデビューアルバムです。9位「Vultures Vol.1」は、シカゴ出身のラッパーKanye West(カニエ・ウェスト)がLA出身のラッパー、Ty Dolla $ign(タイ・ダラー・サイン)と組んだ新作。ところで「Ye」というお名前、やめたんですか? カニエさん。

 

Patrick Fiori(パトリック・フィオーリ)


Patrick Fiori

 2月9日リリースの4年ぶり12枚目のスタジオアルバム「Le chant est libre」が今週のアルバムチャートで4位に入ったPatrick Fiori(パトリック・フィオーリ)は、前号でも触れたヴィクトル・ユゴー原作の大ヒットミュージカル「ノートルダム・ド・パリ(Notre-Dame de Paris)」(1998年初演)で中世パリの警備隊長フェビウス(Phœbus)役を務め、一躍、世界にその名を知られるようになったシンガーソングライターです。すでに2021年9月21日号で一度ご説明していますが、改めてくわしくご紹介します。

 1969年9月、マルセイユ生まれの54歳。本名はPatrick Jean-François Chouchayanで、末尾の「yan」でわかるように父親はアルメニア系で、母親はコルシカ島の出身。Fioriは母方の苗字です。1993年、23歳でフランス代表としてユーロビジョン・ソングコンテストに出場し、コルシカ語で歌って4位。それで注目され1994年、ファーストアルバム「Puisque c'est l'heure」でメジャーデビューしました。

 1998年、「ノートルダム・ド・パリ」の中でダニエル・ラヴォワーヌ、ガルーと3人で歌った曲「Belle」がシングル最高1位。ディズニーのアニメ映画『ムーラン』『プリンス・オブ・エジプト』のフランス語版の挿入歌を歌い、2007年には大御所ジャン=ジャック・ゴールドマン、クリスティーヌ・リコルとコラボしたシングル「4 mots sur un piano」が最高1位になりました。2020年の前作アルバム「Un air de famille」は、フランスSNEPチャート最高2位、ベルギーのワロン地域チャートで最高1位になっています。

 その活躍はフレンチポップスのジャンルにとどまらず、2017年には同じマルセイユ出身のラッパー、Soprano(ソプラーノ)とのデュオで「Chez nous (Plan d'Aou, Air Bel)」を出し、2015年と2022年にはパトリック・ブリュエルやフローラン・パニーらベテラン勢とともに全編コルシカ語、コルシカ島賛歌のアルバムを出してコンサート・ツアーも行った「Corsu - Mezu Mezu」プロジェクト(1、2)に加わって、それぞれ話題になりました。

 さて、新作アルバム「Le chant est libre」には、アメル・ベント、クラウディオ・カペオ、スリマン、ソプラーノらベテランのアーティストに加え、アルメニア系の彼の盟友、レバノン系フランス人でセネガルの首都ダカール生まれのYcare(イカール)が参加していて、旧ソ連圏や中東やアフリカで火薬の匂いがキナくさい世情に「歌が持っている力」を示したいという意図も感じられます。

 今回はそのタイトルチューンにしてオープニングナンバーで、2023年12月に先行シングル発売された「Le chant est libre」をお聴きください。パトリック・フィオーリはTF1の番組「Star Academy(スター・アカデミー)」(2023年12月19日号でご説明)の今シーズン最終回、グランド・フィナーレのステージでこのナンバーを歌い、健在ぶりをアピールしました。

 

Patrick Fiori(パトリック・フィオーリ) - Le chant est libre (Clip officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!