仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2024年2月13日号

 

2024年2月9日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Petit génie - Jungeli, Imen ES, Alonzo

 2 Ceux qu'on ètait - Pierre Garnier

 3 6G - Booba

 4 I Love You - Dadju, Tayc

 5 Faut pas - PLK

 6 Hypé - Aya Nakamura

 7 Si No Estás - Iñigo Quintero

 8 Ça mène à rien - PLK, Gazo

 9 Temps en temps - Zola & Koba LaD

 10 Aucune attche - KeBlack

 

【アルバムチャート】

 1 Chambre 140(Part.3) - PLK

 2 Mode opératoire Vol.1 - ZKR

 3 Décennie - JuL

 4 La cour des miracles - S.Pri Noir

 5 Frères ennemis - Zola & Koba LaD

 6 La route est longue - JuL

 7 LA MELO EST GANGX - Gazo x Tiakola

 8 Carré - Werenoi

 9 à2 à3 - Vianney

 10 NI - Ninho

 

 シングルチャート1位は今週も「Petit génie」。Iñigo Quinteroの「Si No Estás」も7位で、ロングランヒットなお続く。2位の「Ceux qu'on ètait」は、2023年12月19日号でご説明したTF1のテレビ番組「Star Academy(スター・アカデミー)」の2023年の優勝曲です。それを歌うPierre Garnier(ピエール・ガルニエ)は、ノルマンディー半島のマンシュ(Manche/50)県ヴィルデュ=レ=ポエル(Villedieu-les-Poêles)出身の21歳男子。武闘派ラッパーBooba(ブーバ)の新曲「6G」が3位初登場。6位の「Hypé」をシングル発売したAya Nakamura(アヤ・ナカムラ)は、ヴィクトワール音楽賞2024で最優秀女性歌手賞を受賞しました。マリの首都バマコ生まれ。「Djadja」の大ヒットから6年経過した28歳は、今やアフロの女王の貫禄あり。32歳のコンゴ系のラッパーKeBlackの「Aucune attache」が今週10位に入っています。

 アルバムチャート1位のPLK「Chambre 140(Part.3)」は、1月26日発売の「Chambre 140(Part.2)」に続いて2月4日にリリースしたシリーズ第3弾です。JuLをフィーチャーしたその収録曲「Faut pas」が今週のシングルチャート5位に入っています。

 

ZKR

 アルバム2位、2022年3月の「Caméléon」以来2年ぶり3枚目の新作アルバム「Mode opératoire Vol.1」を2月2日にリリースしたZKRは、2022年3月15日号でご紹介しています。ベルギー国境に近いリール(Lille)都市圏、ノール(Nord/59)県ルーベ(Roubaix)出身の27歳のラッパー。両親の出身国はチュニジアとモロッコというマグレヴ系で、元・服役囚。ルーベの町のストリートの日常への地元愛(レペゼン)が持ち味です。

 

●「ヴィクトワール音楽賞2024」発表・授賞式

 2月9日、フランス最高の音楽賞「ヴィクトワール音楽賞2024(Les Victoires de la musique 2024)」各賞の発表・授賞式が行われました。受賞した皆さんをご紹介します。※各賞の日本語訳は日本のレコード大賞に準じています

・Artiste féminine(年間最優秀女性歌手賞) Aya Nakamura

・Artiste masculin(年間最優秀男性歌手賞) Gazo、Vianney

・Révélation féminine(年間最優秀女性新人賞) Zaho de Sagazan

・Révélation masculine(年間最優秀男性新人賞) Yamê

・Révélation scène(年間最優秀パフォーマンス賞) Zaho de Sagazan

・Album(年間最優秀アルバム賞) Zaho de Sagazan - La Symphonie des éclairs

・Chanson originale(年間最優秀楽曲賞) Zaho de Sagazan - La Symphonie des éclairs

・Concert(年間最優秀コンサート賞) Damso - Qaif tour

・Création Audio Visuelle(年間最優秀オーディオ・ヴィジュアル賞) Shay - Commando

 

Zaho de Sagazan

  新人女性シンガーソングライター、Zaho de Sagazan(ザホ・ドゥ・サガザン)が4冠を獲得。彼女については2023年4月11日号でくわしくご紹介しています。大西洋岸のナント(Nantes)に近いロワール=アトランティック(Loire-Atlantique/44)県サン=ナゼール(Saint-Nazaire)出身。2023年3月に「La Symphonie des éclairs」でアルバムデビューしました。

※Zahoの日本語表記ですが、とりあえず「ザホ」と表記します。日本では「ザオ」の表記で紹介されるかもしれませんが、その時はご容赦ください。

 

S. Pri Noir(エス・プリ・ノワール)


S. Pri Noir

 今週のアルバムチャート4位に新作「La cour des miracles」が入ったS. Pri Noir(エス・プリ・ノワール)は、2020年4月28日号でプロフィールに軽く触れていますが、それから4年近くが経過しましたので、改めてくわしくご紹介します。

 本名はMalick Mendosa(マリック・メンドーサ)といい、父親はギニアビサウ出身、母親はセネガル出身という純粋アフリカン。パリ18区で生まれ、同区とパリ20区で育ちました。少年時代からアメリカンフットボールのプロ選手を目指し、育成組織を経てパリ郊外のセーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県ラ・クールヌーヴ(La Courneuve)を本拠地とする「The Flash de la Courneuve Club」に入団。ここはフランス選手権で優勝2回という強豪クラブで、彼はサン=ドニ周辺に住むアフリカ系の人たちに人気のある選手だったそうです。

 2012年、ラッパーへ華麗なる転身。ステージネームは「Esprit noir」(黒人の精神)に由来しますが、すでにカナダのモントリオールを本拠とする同名のメタルバンドがあったので、混同を避けて「S. Pri Noir」としました。2018年にNekfeuらが参加したファーストアルバム「Masque Blanc」(最高3位)、2020年にLeto、4Keus、Alonzo、Laylow、Dadjuらが参加した2枚目のアルバム「État d'esprit」(最高2位)をリリース。毎回上位のポジションに入る人気は全仏オープンを制したテニス選手からミュージシャンに転身したヤニック・ノア(Yannick Noah)を彷彿とさせます。4年ぶり3枚目のスタジオアルバム「La cour des miracles」では、Tiakola、Laylow、Nekfeu、Maes、Guy2Bezbar、Dinosらが参加しています。

 アルバムタイトルの「La cour des miracles」ですが、中世の時代からパリの貧民街、スラム街を指した言葉で、ディズニーのアニメ映画やミュージカルにもなったヴィクトル・ユゴーの有名な小説「ノートルダム・ド・パリ(Notre-Dame de Paris)」では、三文文士のグランゴワールが道に迷った末、物乞いに追われてここにたどり着き、縛り首になりかけたところでヒロインのエスメラルダに救われます。日本語では「奇跡小路」「奇跡の法廷」「奇跡御殿」などと訳されますが、ギャング映画で有名なニューヨークの「地獄の台所(Hell's Kitchen)」みたいな通称ですね。

 その新作アルバムからNekfeuをフィーチャーしたタイトルチューン「La cour des miracles」(今週シングル21位)をお聴きください。リリック(paroles)にあるFleury、Fresnes、Bois d'Ar、la Santéとは、パリ市内やその周辺にある刑務所の名前です。パリ14区のla Santé(サンテ)刑務所には、ユゴーの小説ではエスメラルダが、1980年代には故・佐川一政氏が収監されていました。佐川氏の著作として1990年に小説「サンテ」、2002年に「漫画サンテ」が、日本で刊行されています。

 

S. Pri Noir(エス・プリ・ノワール) - La cour des miracles

 

では、また来週

À la semaine prochaine!