2022年12月2日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Amber - Zola
2 Fetty Wap - Maes
3 Die - Gazo
4 Calm down - Rema
5 Genkidama - Niska
6 Namek - JuL
7 I'm Good (Blue) - David Guetta
8 Unholy - Sam Smith
9 Lola - RK
10 Balader - Soolking
【アルバムチャート】
1 L'emprise - Mylène Farmer
2 Le monde est méchant - Niska
3 Rose des vents - Claudio Capéo
4 Autobahn - SCH
5 Encore une fois - Patrick Bruel
6 Cœur - Clara Luciani
7 Civilisation - Orelsan
8 L'École de la vie - Kendji Girac
9 Polnareff chante Polnareff - Michel Polnareff
10 Chasseur d'etoiles - Soprano
シングルチャート1位は今週もZolaの「Amber」。5位にNiskaが11月24日にリリースした新曲「Genkidama」新登場。タイトルはアニメ「ドラゴンボール」の悟空の必殺技「元気玉」のこと。ヨーロッパではワールドカップで超サイヤ人級のドイツ、スペインを破った日本代表の大活躍が「Genkidamaを使った」と言われています。でもクロアチア相手では尽きたのか? 7位以下は、前週並んでいたSCHの新作アルバム収録曲と入れ替わっての再浮上組。
アルバムチャートは、この秋最大の話題、Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)の「L'emprise」がやっぱり1位。アルバムを出せば必ず1位になるのはこの人とロックバンドのIndochine(アンドシーヌ)、ラッパーのJuLぐらいでしょうか。2位のNiskaの「Le monde est méchant」は2021年11月発売で再チャートイン。
スターになっても自らを一介の「アコーディオン弾き」と称するイタリア系37歳、2020年12月15日号でご紹介したClaudio Capéo(クラウディオ・カペオ)の11月25日発売の新作アルバムがアルバム3位にチャートイン。「Penso a te」以来2年ぶりで、タイトル「Rose des vents」はルイ・ヴィトンの香水の名前。6位にClara Luciani(クララ・ルチアーニ)、10位にSoprano(ソプラーノ)の旧作が再浮上。
Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)
御年61歳にして今なおフレンチポップスの人気ナンバーワン女性シンガーとして君臨あそばされているMylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)は、このブログの第1回、2020年1月7日号でとりあげましたし、以前はなかったWikipediaの日本語ページもできましたから、今回は経歴などは省いて過去のチャート実績、日本とのご縁、11月25日発売の12作目のスタジオアルバム「L'emprise」についてご紹介したいと思います。
フランスSNEPチャートでは、スタジオアルバムは1986年8月のデビュー盤「Cendres de Lune」こそ最高20位でしたが、1988年のセカンド「Ainsi soit je...」から今回の12作目「L'emprise」まで、1999年の「Innamoramento」(最高2位)を除いた10作が最高1位になりました。ライブ盤は4作が最高1位で、最近出たベスト盤は2020年の「Histoires de」が最高2位、2021年の「Plus grandir」が最高1位でした。
シングルは1987年の初期の代表作「Sans contrefaçon」こそ最高2位ですが、1988年の「 Pourvu qu'elles soient douces」、1991年の「Désenchantée」、2009年の「Si j'avais au moins…」、2011年の「Lonely Lisa」、ご存知スティング(Sting)先生とデュエットした2015年の「Stolen Car」、アメリカ人のLPとコラボした2018年の「N'oublie pas」など、計21曲が最高1位になっています。
フランス語圏以外では、よく言われるようにロシアで非常に人気があり、2005年以降、ロシア国内チャートでアルバム3作が最高1位。かつては日本盤も出ましたが、日本での知名度はまだ低いのが残念です。
文才にも恵まれている彼女が書くエスプリの効いた歌詞、短編映画のような凝ったPVで繰りひろげられるゴシックな世界は、鬱、絶望、暴力、核や疫病による死、宗教の欺瞞、オカルティスム、「倒錯」と呼ばれた多様な性のかたちなどにもタブーなく踏み込んでいますから、たとえばフランス文学者の澁澤龍彦氏の著作の愛読者や、コンサートの衣装を担当したジャン=ポール・ゴルティエの信奉者など一部の人たちの間で「秘密結社的に」愛好されたとしても、日本では一般ウケがしにくいアーティスト、というのも理解できますが……。
そんな事情に加え、コンサートがゴージャスすぎることもあり来日公演はいまだ実現していませんが、プロモーション来日で東京のFM局J-WAVEの番組に出演したことはあります。なお、2005年のアルバム「Avant que l'ombre...」(最高1位)に収録されたシングル「Peut-être toi(邦題:あなたかも)」(最高3位)のPVは、日本のアニメ制作会社Production I.G.が手がけ、ファンの間ではなかなか好評だったようです。
前作「Désobéissance」(「不服従」という意味)から4年ぶりのスタジオアルバム「L'emprise」(「支配」という意味)では、変わることなく彼女ならではの暗黒と妖艶の世界を展開。ファンをがっかりさせません。曲でコラボしているアーティストは、UKのベテラングループArchive、アメリカのシンガーソングライターMoby、フランスのポップロックデュオAaron、フランスのシンガーソングライターでミュージックビデオのディレクターでもあるWoodkidと、独自の個性を発揮する実力派が揃っています。
それでは、その収録曲から9月に先行リリースされ、10月7日付シングルチャートで10位まで上昇した「À tout jamais」をお聴きください。「永遠に」という意味です。「Peut-être toi」のアニメPVもあわせてどうぞ。
Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール) - À tout jamais (Clip Officiel)
Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール) - Peut-être toi (Clip Officiel HD)
では、また来週
À la semaine prochaine!