2022年8月26日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Die - Gazo
2 Fade up - Zeg P
3 Petete - Gambi
4 Tout va bien - Alonzo
5 Calm down - Rema
6 Balader - Soolking
7 Chop (Nouvelle école) - Fresh
8 Doja - Central Cee
9 J'ai tout su - JuL
10 As It Was - Harry Styles
【アルバムチャート】
1 KMT - Gazo
2 Finally Enough Love - Madonna
3 Extraterrestre - JuL
4 Mélo - Tiakola
5 Sans visa - Soolking
6 Jefe - Ninho
7 Mercury - Acts 1 & 2 - Imagine Dragons
8 Civilisation - Orelsan
9 Ressources - Amir
10 Les autres c'est nous - Bigflo & Oli
シングルチャートは8位にUKの24歳のラッパー、Central Cee(セントラル・シー)の「Doja」が上がってきた他は前週と同じ顔ぶれで、Gazoはシングル「Die」とアルバム「KMT」がともに1位を堅持。Soolkingだけがはじき出されて12位に下がりました。
アルバムチャート2位に、夏バテで寝た子も起こす元気な64歳マドンナ(Madonna)のダンス・ヒット・トラック&リミックス集16曲入り「Finally Enough Love」が初登場。今年は「残飯伝説」が語られながら彼女がメジャーデビューしてから40周年です。
Amir(アミール)
今週のアルバムチャート9位に、2020年6月リリースの旧作「Ressources」が再登場したAmir(アミール)は2020年11月3日号で一度とりあげていますが、それから2年近く経過したので、最近の彼の動向も含めてあらためてご紹介いたします。
1984年6月、パリ12区生まれの38歳。本名はAmir Haddad。両親はチュニジア系とモロッコ系ですがユダヤ教徒で、フランスとイスラエルの二重国籍です。8歳の時に一家でイスラエルに移住し、高卒後兵役につきイスラエル軍の通訳を務めてから名門ヘブライ大学に進学。歯科医師の資格を取りました。
イスラエル出身でフランスのポピュラー音楽界で活躍した人としては、人気絶頂の1975年に突然の自死を遂げたMike Brant(マイク・ブラント)、アンリ・サルヴァドールの名曲「Jardin d'hiver」を作詞・作曲したシンガーソングライターのKeren Ann(ケレン・アン)、実力派R&BシンガーのTALなどがいます。
歯科医師として勤務しながらシンガーソングライターを目指し、2011年に全曲ヘブライ語のアルバムをイスラエルでリリースした後、フランスのレコード会社と契約。2014年、29歳でフランスTF1テレビのオーディション番組「The Voice」に出場し決勝に進出しましたが優勝したラテン・ポップのKendji Girac(ケンジ・ジラク)に敗れて3位。それでも2015年にシングル「Oasis」でメジャーデビューを果たします(最高101位)。
スターダムにのし上がるきっかけは2016年のユーロヴィジョン・ソング・コンテストでした。フランス代表としてストックホルムの決勝大会に出場し結果は6位(優勝はウクライナの女性歌手ジャマラ)でしたが、出場楽曲「J'ai cherche」がSNEPシングルチャート最高2位の大ヒットを記録しました。その後、「On dirait」「États d'amour」「Longtemps」「La fête」などのヒット曲を送り出しています。昔のフレンチポップス青春歌謡を思わせるダンサブルで明るい歌声が持ち味。「Ressources」は2016年の「Au cœur de moi」(最高6位)、2017年の「Addictions」(最高3位)に続くフランスでは3枚目のアルバムで、チャート最高3位でした。
最近では、「Dernière danse」がヒットしたIndila(インディラ)とのデュエットで2020年にシングル「Carrousel(回転木馬)」を出し、2022年4月には主演俳優として「Sélectioné(選ばれし者)」でパリの劇場の舞台に立ちます。
日本では全く知られていませんが、ユダヤ系フランス人の競泳、水球の選手で、1936年ベルリン五輪の男子4×200メートル自由形リレーでドイツに勝って4位入賞(金メダルは日本)。第二次大戦中、ヴィシー政権下のトゥールーズでゲシュタポに逮捕されて強制収容所に送られ、妻と娘が亡くなり体重が約半分になりながら生還。1948年ロンドン五輪に出場し「アウシュヴィッツの水泳選手」と紹介されて話題になったAlfred Nakache(アルフレッド・ナカシュ)の壮絶な生涯を同じユダヤ人であるアミールが演じ、好評を得て新たな境地を開いています。
今回はアルバム9位に再浮上した「Ressources」の収録曲から、2022年5月にシングル発売された「Ce soir」をお聴きください。歌詞では「Ce soir on vit la vie en mieux. Parce qu'hier est déjà trop vieux. Parce que demain est illusoire.(今夜、僕らは人生をよりよく生きるんだ。きのうはもう古すぎるから。あすはまぼろしだから)」と繰り返します。う~ん、やっぱりミシェル・フュガン(Michel Fugain)あたりを彷彿とさせるフレンチポップス青春歌謡です。
Amir(アミール) - Ce soir
では、また来週
À la semaine prochaine!