仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2022年2月1日号

 

2022年1月28日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Jefe - Ninho

 2 VVS - Ninho

 3 L'enfer - Stromae

 4 abcdefu - Gayle

 5 Jour meilleur - Orelsan

 6 Démons - Angèle

 7 Love nwantiti - Ckay

 8 Best life - Naps

 9 Cold Heart - Elton John, Dua Lipa

 10 Enemy - Imagine Dragons

 

【アルバムチャート】

 1 Memoria - Jazzy Bazz

 2 Jefe - Ninho

 3 Civilisation - Orelsan

 4 Nonante-cinq - Angèle

 5 Indépendance - JuL

 6 30 - Adele

 7 Mesdames - Grand corps malade

 8 Dawn FM - The weeknd

 9 Le monde est méchant - Niska

 10 Euphoria - Moha MMZ

 

 シングルチャート1位にNinhoの「Jefe」が返り咲き。9位にエルトン・ジョンとデュア・リパが再浮上し、10位にアメリカのオルタナ・バンド、イマジン・ドラゴンズがきています。今週のアルバムチャート初登場は、1位のJazzy Bazz「Memoria」と、10位のMoha MMZ「Euphoria」。「ユーフォリア」は日本語にもなっていますが「多幸感」という意味です。語源はイタリア語。 

Moha MMZ 

  MMZはMini Mafia Zooの略。2014年にパリ南郊コルベイユ=エソンヌ(Corbeil-Essonnes)の町で結成されたラップ・デュオで、メンバーはモハ(Moha/本名Mohamed Lakmale)とレイザー(Lazer/本名Amine Ramani)という名のモロッコ系2人組。そのモハのほうのソロ活動なので「Moha MMZ」という名義になっています。ニコラ・シルキスが「Nicola Indochine」の名義でソロ活動するようなもの?

 

Jazzy Bazz(ジャジー・バズ)

 

Jazzy Buzz

 1月21日リリースのスタジオアルバム「Memoria」が今週、チャート1位にいきなり初登場したJazzy Bazz(ジャジー・バズ)は、そのキャリアが10年を超える中堅どころの男性ラッパーです。スキンヘッドがトレードマーク。1989年4月、パリ19区生まれの32歳。本名はIvan Bruno-Arbiserで、父親はイタリア系、母親はアルゼンチン、リトアニア、ポーランドの血を引いています。後で13区スタッド・シャルレティを本拠とするパリFCに宗旨替えしてしまうのですが、PSGの熱心なファン(サンジェリスタ)だったイワン少年は8歳でラップに出会い、大学に進学してから音楽活動を本格化させました。

  名前がなぜJazzyかというと、ジャズメンでサクソフォン奏者の父親に敬意を表しているそうです。日本ではあまり知られていませんが、パリは20世紀はじめ、アメリカでは人種差別で演奏の場が限られていた黒人ジャズメンを温かく迎え入れて以来、世界のジャズの中心地の一つになっています。そもそもジャズ発祥の地ニューオーリンズはフランスのルイジアナ植民地の中心都市でしたから、縁は浅くありません。1958年のフランス映画『死刑台のエレベーター(Ascenseur pour l'échafaud)』でルイ・マル監督は、音楽に「モダンジャズの帝王」マイルス・デイヴィスを起用しています。Bazzというのは少年時代の彼のあだ名で、当時は言われてイヤだったそうです(「バズる」の語源のBuzzではありません)。

  閑話休題。ジャジー・バズは同じパリ19区出身で幼なじみのEsso Luxueuxとヒップホップだけでなくジャズなどさまざまな音楽に挑戦するグループ「Grande Ville」を結成。それが彼に音楽的に豊かなバックボーンをもたらしています。2014年までパリを中心に活動しNekfeu(ネクフ)やAlpha Wannもいたヒップホップグループ「L'entourage」にも加わっていました。ブロンクスのDITC(Diggin' In The Crates)、ブルックリンのBoot Camp Clikなどアメリカ90年代のラッパーの曲をよく聴いていて、その影響を受けています。

  2010年に始まったラップバトル大会「Rap Contenders」に参戦して名をあげ、2012年にファーストソロアルバム「Sur la Route du 3.14」をまずネット限定でリリースします。アルバムは2016年に「P-Town」、2018年の「Nuit」と出しています。4枚目の新作スタジオアルバム「Memoria」から、今週シングルチャート12位に上がってきた「Élément 115」をお聴きください。かつて同じ「L'entourage」のメンバーでパリ15区育ちのNekfeuをフィーチャー。やや難解な歌詞でわかるように、けっこう知性派な側面も見せています。

  なお、ジャジー・バズは現在リーグ・ドゥ(2部)で昇格圏内にいるパリFCの「公式ラッパー兼応援団長」のようになっていて、ホームゲームでスタジアムに現れ曲も披露しています。2022-2023シーズン、夢の首都対決「パリ・ダービー」のハーフタイムで彼が熱狂的サンジェリスタのNiskaなどと「ラップバトル」を繰りひろげられるよう、5位以内に入ってリーグ・アン昇格を果たしてほしいですね(2位以内自動昇格。3~5位はプレーオフ&入れ替え戦)。

 

Jazzy Bazz(ジャジー・バズ) - Élément 115

 

 

では、また来週

À la semaine prochaine!