仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2021年4月6日号

 

2021年4月2日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Vroum vroum - Moha K

 2 Le temps - Tayc

 3 La kiffance - Naps

 4 Mode akimbo ft. JuL - SCH

 5 Mona lisa - Booba

 6 Mon poto - Kore & Ninho

 7 La seleçao - Alonzo

 8 Mannschaft ft. Freeze Corleone - SCH

 9 À cœur ouvert - Djadja & Dinaz

 10 Plein les poches - Djadja & Dinaz

 

【アルバムチャート】

 1 Spleen - Djadja & Dinaz

 2 JVLIVS II - SCH

 3 Capo dei capi vol.II & III - Alonzo

 4 À tous les batards - Eddy de Pretto

 5 2021 Les Enfoirés À côté de vous - Les Enfoirés

 6 Ultra - Booba

 7 2.7.0 - Kaaris

 8 Mesdames - Grand corps malade

 9 Loin des yeux - Boulevard des airs

 10 Future nostalgia - Dua Lipa

 

 シングルチャートは前週のSCHの「占領下」から解放。「Vroum vroum」が初登場1位のMoha Kはモロッコの音楽一家で育った19歳のラッパー。北アフリカ・マグレヴの音楽「ライ(Raï)」がベースにある独特の音楽性で2020年、InstagramやTikTokの動画でブレイクしました。アルバムチャート上位は今週も新鮮な顔ぶれ続々の春。1位のDjadja & Dinazは2014年、実弾を撃ちあうビデオクリップを撮影して逮捕者を出すという衝撃のデビューを遂げたヒップホップデュオ。アルバムタイトルの「Spleen」はボードレールの「巴里の憂鬱(Le spleen de Paris)」を連想する人が多そうですが……。3位のAlonzoはマルセイユ出身38歳のベテランラッパー。4位のEddy de Presttoは27歳の俳優兼シンガーソングライター。2018年のデビューアルバム「Cure」(最高1位)ではLGBTQの問題に真正面から向きあった社会派で、新作の「全てのろくでなしどもへ」(拙訳)というタイトルも挑戦的です。

 

Boulevard des airs(ブールヴァール・デ・ゼール)

 

 今週、ニューアルバム「Loin des yeux」がSNEPチャート9位に初登場した7人組のBoulevard des airs(ブールヴァール・デ・ゼール/BDA)は、2018年6月に初来日してライブを行い、日本限定発売アルバム「旅立ちの朝」(「Bruxelles」+ボーナストラック)も出したことがあるので、ご存知の方はけっこういらっしゃると思います。

  南仏オート・ピレネー県タルブ(Tarbes)に住む高校生だったフロラン、シルヴァンの二人を中心に2004年にグループ結成。ライブで実績を積み、満を持して発売した2011年のファーストアルバム「Paris-Buenos Aires」はゴールドディスク、2015年のサードアルバム「Bruxelles」はダブルプラチナディスクに輝きました。グループ名とは正反対に、7人のうち4人は作曲ができ、オーソドックスなフレンチポップスからスペインも南米もカリブもジャマイカもその他ワールドミュージックもエレクトロポップも、広範囲の音楽ジャンルを器用にこなせる高水準の音楽性は「中身ぎっしり」。エネルギッシュなライブも定評があることから、フランス語圏の多くのアーチストが「一緒にやりたい」と声をかけるような「ミュージシャンズ・ミュージシャン」です。アルバムでコラボしている名前だけでもPatrick Bruel、ZAZ、Vianney、Tryo、L.E.J、Yannick Noah、Claudio Capéoなどが挙がります。2020年にはLes Enfoirésに参加しました。

  フランスの音楽賞を何度も取っていて、英語圏で言えば「TOTO」(古すぎますか)のような才人集団ですが、本領はライブにあり。フランスだけでなく全ヨーロッパ、カナダ、南米などをツアーで精力的に回り、地元ピレネー山脈の海抜2876メートルの山頂で演奏して話題になったこともありました。疫病がおさまればぜひ再来日してほしいですね。

  新作アルバム「Loin des yeux」のタイトルは「Loin des yeux, loin du cœur(目から遠ければ心からも遠い=去る者日々に疎し)」ということわざからきています。その収録曲の中からライブで一番盛り上がるという「Emmène-moi」をお聴きください。マッシュアップで売り出した女子3人組L.E.Jをフィーチャーしています。なお、シャルル・アズナブールの有名な曲は「Emmenez-moi」でスペルが違い、意味は「私を連れていって」で同じでも、ていねいな言い方です。

 

 

Boulevard des airs(ブールヴァール・デ・ゼール)- Emmène-moi ft. L.E.J

 

では、また来週

À la semaine prochaine!