映画三昧 #2629 ⭐️⭐️☆ レイジング・ブル(80) | juntana325 趣味三昧

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初めてこれを観た時には、かなり衝撃的だった。今ではデ・ニーロ アプローチを真似する俳優は多い。痩せたり太ったり、科学的に短期間にやってしまう。それに特殊メイクもあり、それを補う技術も発達した。ところが、当時、そんな事をする演技者はいなかった。反せば、彼がやらなかったら、誰もやらなかったもしれない。役者たるもの、それくらいやらなかったら役者ではない。彼自身が、名優のハードルを上げた。



ボクシング映画ではあるが、スポ根ではない。プロボクサー ジェイクの半生を描く。減量してボクシング体型にしたのも見事だが、20キロ以上太ってぶよぶよ体型にしたのも、また見事だった。


最初は、チャンピオンを夢見る。ハングリー精神剥き出しのエネルギッシュさが、言葉だけでなく、身体中から漲る。しかし、リングの外では女にだらしがない。悪ガキのデ・ニーロが良い。浮気のつもりのビッキーとの関係だったが、美しさに惹かれ、妻と離婚して彼女と結婚する。




子供も生まれ、人間に丸みが出て、何か変わると思ったが、逆だった。ランクが上がれば上がるほど、猜疑心を強めていく。ビッキーの浮気を疑い、練習どころではない。ところが、試合には負けない。そのファイトぶりは、やり場のない猜疑心の吐口のごとく、怒りを相手にぶつける。特に、試合後半に繰り出すラッシュは、仇に会ったように容赦ない。リングの上で、ジェイクは王様だった。彼はボクシングに救われた。




そんなジェイクにも、グローブをリングに置く日が来る。引退した彼はバーを開く。しかし、周囲の取り巻きは、ボクシングというタガが外れた彼から去っていく。弟も妻子も、彼の人間性にはうんざりしていた。結局、ボクシングを取ったら、彼には何も残らなかった。白黒映像が、40年代の雰囲気を出すが、それ以上に、彼の華々しいが空虚に満ちた人生をシンボリックに表現していて効果的だった。




解説

1940~50年代に活躍しミドル級チャンピオンにも輝いた実在のボクサー、ジェイク・ラモッタの半生を、「タクシードライバー」のマーティン・スコセッシ監督&ロバート・デ・ニーロ主演コンビが映画化。後に「ブロンクスの猛牛」とも呼ばれるようになるジェイクが、八百長試合を強いてくる組織との関係などに悩まされながらも栄光をつかみとる。しかし、妻のビッキーやセコンドを務める弟ジョーイに対し猜疑心や嫉妬心を募らせていき、信頼できる人間が離れていくことで凋落していく。主演のデ・ニーロは引退後のラモッタの姿を再現するため27キロも増量して挑み、アカデミー主演男優賞を受賞。体型をも変化させる徹底した役作りを意味する「デ・ニーロ・アプローチ」という言葉を生むきっかけとなる。