「ミレニアム」のノオミ・ラパスは、相当なタフガイ?だったが、この作品も、そんな予感をさせる。「セブン・シスターズ」も彼女の魅力が出ていたと思うが、やはり彼女の真骨頂は、こういうアクション物のような気がする。
最初は、ロンドンの潜入捜査で、移民局でくすぶっている所から始まる。ところが、話が進むうちに、大きな事件に巻き込まれていく。そうすると、今まで、眠っていた彼女のスパイの血が、覚醒していく。その次第に研ぎ澄まされていくアリスのスパイ魂は、ノオミ・ラパスの独壇場だ。ミレニアムのサランデル役の切れ味を彷彿とさせる。
ストーリーは、スパイアクションでありがちな、裏切りと殺しを絡めたテロ事件。しかし、以前あった単純にイスラム教系のテロや、民族抗争のテロを水際で防ぐという話ではない。テロを利用して、世論を無謀な反テロに誘導したり、諜報活動を行いやすくしたりする、工作活動だ。そういう意味では、反テロという名のもとの行為が、すべて正義である時代は終わった。
アリスは、自分の取調によって、テロを防止出来なかった事を悔やむ。筋立ての中で、何度となくそういシーンが挿入されるが、この作品に限れば、無用ではないだろうか。それが、逆に雑念になって、スパイとしての彼女の非情さを薄めてしまう。曲者的な要素が少ない分、バイプレイヤーは、思いっきり曲者だらけだ。オーランド・ブルーム、マイケル・ダグラス、ジョン・マルコビッチ、紅一点のトニ・コレット。組織の内通者を絞るとなると、相当難しい。ジョン・マルコビッチなんて、登場した時から、怪しげなオーラを出しまくる。
ラストの暗殺シーンは、美しい。ナイフの一撃でテロ幹部を暗殺する。一流のプロフェッショナリズムは、観ていて気持ちがいい。その後、上司のジョン・マルコビッチと合流するが、内通者の一件は片付いているにもかかわらず、マルコビッチは、まだ怪しく見えてしまう。この役者の性格は、得なのか損なのか?