映画三昧 #2009 ⭐️⭐️☆ 地獄の黙示録(79) | juntana325 趣味三昧

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「ゴッドファーザー」シリーズで世界的成功を収めたフランシス・フォード・コッポラ監督が、1979年に発表した傑作戦争映画。ジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」を原作に、舞台をベトナム戦争下のジャングルに移して戦争の狂気を描き、第32回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞。過酷で困難を極めた撮影時のエピソードは伝説的であり、その過程はドキュメンタリー「ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録」(91)で描かれている。また、22年後の2001年には、コッポラ自らの再編集で未公開シーンを追加し、50分近く長い「地獄の黙示録 特別完全版」も製作・公開された。サイゴンのホテルに滞在していたアメリカ陸軍のウィラード大尉は、軍上層部からカーツ大佐の暗殺を命じられる。カーツ大佐は任務で訪れたカンボジアのジャングル奥地で勝手に自らの王国を築きあげ、軍から危険人物とみなされていた。ウィラード大尉は部下たちを連れ、哨戒艇で川をさかのぼってカーツ大佐の王国を目指すが、その途中で戦争がもたらした異様な光景を次々と目撃する。日本初公開は80年。2016年にデジタルリマスター版でリバイバル公開される。




この作品は、美しく幻想的な映像で満ちているが、全体的に暗いシーンが多くて、何年か前に観た時は、つぶれた感じで、かなり観にくかった。今回は、デジタルリマスターで、再現されたシーンを観るのが楽しみだ。


冒頭、主人公ウィラードがサイゴンの熱暑にうなされるシーンから始まる。それは、戦争という病にうなされているようにも見える。バックにはドアーズの「ジ・エンド」がながれ、デカダンスの雰囲気を一層高める。


その後、極秘任務に就く彼の眼前に広がるのは、狂気の世界。まず、その任務の不可解さは、一瞥即解だ。戦場で殺人罪?、しかも犯人のカーツ大佐を抹殺する、それ自体が狂気の始まりだ。


それから30分くらいキルゴア中佐率いる軍の戦闘シーンが続く。かの有名な大音量のワーグナーで、敵陣に突っ込む戦場に、この戦争が、規律や大義名分を失っている事を、ウィラードは目のあたりにする。キルゴア中佐は、完全に狂っている。カーツ大佐の狂気と何が違うのだろうか。その戦場で戦う兵士たちも、狂気と正気の狭間に漂っている。キルゴア中佐役のロバート・デュパルの怪演は、彼の金字塔だ。




戦場に深入りすると、バニーガールの慰問や 指揮官不在の戦闘、麻薬の常用、あってはならない状況が散見する。腐敗した戦場は、末期的な様相を呈している。その狂気の戦場をくぐり抜けて、カーツ大佐の元にたどり着く。




この作品は、決してベトナム戦争の真実ではないと思うが、戦争が引き起こす狂気の連鎖を描いていることは間違いない。カーツ大佐が語る言葉は、カリスマ性があり、真実の一片が含まれている。彼が、狂気の果てに、今に至り、後は、自分の死を待っている。もしかしたら、彼が一番正気で、正気ゆえに、軍は抹殺したかったのかも知れない。




後半は、前半と比すると相対的に暗い。狂気の元凶は、戦争がもたらす恐怖と闇なのだろうか。理性を失い、その恐怖のあまり、人は平気で人を殺してしまう。それに対する罪悪感は働かず、深い闇の中に理性をしまいこんでしまう。カーツ大佐は、そんな人間の恐ろしさを熟知していて、ウィラードをそこに引きずり込もうとしている。自分の目には、そんな風に映って見える。


そういえば、同じグリーンベレー出身のランボーは、アメリカ本土で狂気のごとく暴れた。どことなく、戦争もたらす共通項を感じてしまう。




この作品を初めて観た時から、カーツ大佐=マーロン・ブランドは違和感がある。彼の軍に対する反抗は、ブランドそのままなのだが、軍に従順なエリート将校の豹変というストーリーに、イメージが決定的に違う。それでも、ブランドの他を寄せ付けないような威圧感は健在だ。




そして、忘れてはいけないのは、哨戒艇のクルーたちだ。死を前にして、どうでもいい戦争に駆り出され、常軌を逸していくクルー達も、なかなか見ものだ。フレデリック・フォレスト、サム・ボトムズ、ローレンス・フィッシュバーンなど、今となっては、名優揃いだ。一方、マーティン・シーンは、戦争に疲れた様子がなく、周りの退廃的な空気に溶け込んでいかず、最後まで浮いた感じがした。ちょい役だったが、意外にもハリソン・フォードは、内勤の事務的なイエスマンがよく似合った。