映画三昧 #1496 山河ノスタルジア(15)⭐️⭐️* | juntana325 趣味三昧

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「罪の手ざわり」で第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門脚本賞を受賞した中国の名匠ジャ・ジャンクーが、1人の女性と彼女に思いを寄せる2人の男の人生を1999年、2014年、2025年という3つの時代と社会を通して描く人間ドラマ。


99年、山西省・汾陽(フェンヤン)の小学校教師タオは炭鉱で働くリャンと恋愛関係にあった。しかし、タオはリャンの友人で実業家のジンシェンからプロポーズを受け、ジンシェンと結婚。リャンは故郷の街を離れることとなる。タオとジンシェンの間には男の子が誕生し、子どもはダラーと名づけられた。14年、タオはジンシェンと離婚し、ひとり汾陽で暮らしていた。タオの父親の葬儀に出席するため、数年ぶりに戻ってきたダラーからジンシェンとともにオーストラリアに移住することを知らされる。25年、オーストラリアの地で中国語をほとんど話さない生活を送っていたダラーは、母親と同世代の中国語教師ミアと出会う。


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幼馴染の三角関係から始まり、ラストは離れ離れになった母子へとドラマが展開していく。背景には、いつも登場人物たちの故郷 汾陽が見え隠れする。特に、ダラーは、汾陽の記憶など残っていないはずだが、彼が遠くを見つめる時、どこか故郷を思っているように見えてくる。


この作品で描かれる夫婦は、現代の中国人が描く成功者像なのだろうか。もちろん、離婚は想定外だが、地方都市で成功し、大都市に移り、最後は、海外に移住して、安穏な生活を送る。この物語で描かれる故郷 汾陽は、ジンシェンにとって、踏み台にすぎず、望郷の念などは、微塵もない


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しかし、その息子ダラーにとって、育ったオーストラリアは、故郷としては物足りず、まるで根無し草のように見える。母親の存在=故郷 汾陽が、彼にとって、ルーツである事を知っている。彼は、作品には描かれなかったが、きっと故郷の土を踏むだろう。そして、その故郷の景色が、埋まらなかった隙間を埋めてくれるはずだ。


世界中に、華僑がいる。中国人は国内だけでなく、国外にも、一国が出来るくらいの人口を抱える。何千万人にも及ぶ、国外にいる中国人の気持ちを代弁しているのが、この作品の後半のように思える。望郷の念は尽きない、しかし、それを叶える人は、ほんの一握りに違いない。


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ラスト、一人タオは、空き地で昔のダンスミュージックに合わせて踊る。何で、こんなことになってしまったのかという孤独感に包まれる。自分の人生を後悔しながら、輝いていた青春時代に浸る彼女の姿は、切なすぎる。


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