映画三昧 #1336 恍惚の人(73)_ _ _ | juntana325 趣味三昧

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息子も孫も顔をしかめてそっぽを向くボケた八十四歳の老人との温かい心のふれ合いを日常茶飯事の中でとらえる。原作は有吉佐和子の同名小説。脚本は松山善三、監督は「地獄門」の豊田四郎、撮影は「喜劇 泥棒大家族 天下を取る」の岡崎宏三。

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観るたびに、ゾッとする。それは、ちょっとしたホラー映画なんかは比じゃない。なぜなら、ホラーは非現実だが、この作品は現実に他ならないからだ。それでも、この作品は、家族が崩壊しないだけ、まだまだ幸せな方かもしれない。

孫のセリフ「あれは人間じゃない」
嫁のセリフ「おじいちゃんは子供に帰ったのよ」

考え方は、それぞれだが、すでに元の祖父茂造ではなくなっている事は、間違えはない。その他人になってしまった家族と、どう向き合えばいいのか、40年経った今でも、問題は解決していない。

この作品の主人公は、その家族の嫁、高峰秀子だ。祖父 森繁久弥のために犠牲になりたくないと言いながらも、家庭を守るために、自らを犠牲にしていく。当時は、介護の役割は、「嫁」だったが、今は、そうとは限らない。何れにしても、誰かが犠牲になる、他人事ではない。長寿が故に、痴呆が増える、人間の性とはいえ、皮肉な話だ。

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この作品の良し悪しは問題外だ。社会全体の普遍的な課題で、誰もが遭遇する可能性がある。ポジティブに生きて、温かく見守れるようになるには、愛情と自己鍛錬が必要だ。しかし、それ以上に、自分の未来が、そこにあるかと思うと、ひどく憂鬱になる。人間の尊厳とは何なんだろう。