あの日から一週間。
俺達の約束の水曜日。
あの日、
「来るわけないじゃん。」って言って………
俺は怒って帰ってしまった。
だから………もう、智はあそこにはいないだろう。
って、思ってた。
多部ちゃんとは、付き合ってはいない。
でも、公認のカップルみたいになっていた。
あの日、智と別れて帰る途中で
偶然、会った多部ちゃん。
彼女を送ってやった次の日に
部室の黒板に、俺と多部ちゃんの相合い傘。
否定も肯定もしないうちに
どんどん話は進んで行って
いつのまにか公認のカップル。
部活終わりに
部室を掃いていたら
『あれ?
櫻井くん帰ってないの?
水曜日はいつも一目散に帰ってたのに………
いつも手伝ってくれるから
今日はいいよ。』
と、不思議そうに尋ねてきた。
多部ちゃんが、俺たちが部活を終えると
一人で部室を掃除したり
ボールを磨いたりしてるって知って
次の日から俺は彼女の手伝いをしてる。
まあ、それもあって俺たちが
公認になったんだろうなって想像はついた。
『もう、いいんだ。
俺が手伝いたいんだから。』
そう答えて、ホウキで砂をかき集めていく。
『そ、そう…………なんだ………
じゃあ…………お願い………します。』
と、なんだか腑に落ちない様子の声を出して
ボール磨きを始めた。
静まり返った部室に
ホウキがけをする音と
ボールを磨く音だけ
俺の頭には、
智が神社の銀杏の木の前に佇む姿が拭えない。
「もう、いるはずがない。」
って、頭では思うのに
心が行きたがっている。
『………ちょっと聞いていいですか?』
沈黙を破って多部ちゃんが
俺に聞いてくる。
『ん?なに?』
『えっと…………
なんだか………………
最近………………
噂………で……』
多部ちゃんが、なんだか言いにくそうに
口をモゴモゴさせて
俺達の噂について聞いているんだろう。
確かに公認になってると言っても
俺たち同士、確認も
まして、告白もしてないわけだから
彼女にとっては大迷惑な話だ。
『ああっ。
最近、俺たちが付き合ってるって話?』
なに食わぬ顔で
冷静に多部ちゃんの質問を当ててみる。
多部ちゃんはコクンと頷いて
真っ赤になった。
『ごめん。
迷惑だよね。
俺と付き合ってるなんて噂になって……』
と、俺が言うと
彼女は首を激しく左右に振った。
嫌ではなかったんだ。
嫌な思いをさせてたら悪いけど
嫌じゃないならよかったよ。
『じゃあ………
本当に付き合っちゃう?』
多部ちゃんとちゃんと付き合ってみようか
本当の恋愛がわかるかもしれない。
そう思って言った俺の言葉に
多部ちゃんは目を見開いて
『……………………ちがう…………
私じゃないでしょ……
本当に好きな人って
私じゃないでしょ…………』
と、俺を見る。
『………私…………
私は、
櫻井くんが好き……
だけど……………
櫻井くんは違うよね。』
『………え…………』
『私…………知ってるよ。
あの子でしょ…………』
『え?
あの子って…………?』
『……………………
…………大野…………くん。』
彼女の口から出てきた名前に狼狽えた。
『え?
なんで?
なんで智…………
智は……俺の幼馴染みで友達で…………』
『ふふっ………
凄い慌てぶりだよ。』
と、彼女は笑っていた。
先ほどまで、どこかオドオドしてたのに
今じゃなんだか確信を得たよう。
今度は俺の方がキョド(挙動不審)ってる。
『だ、だって…………
同性だよ。
智と俺じゃあ…………
男同士だよ…………
ありえないだろ……………
ありえない。
ありえない。』
俺は多部ちゃんに答えながら
自分に言い聞かす。
なのに、
『同性だとダメなの?
好きって感情はどうしようもないんじゃない?』
と、あっさりと言ってのけた。
『そ、………………
…………そ………………』
言葉にならない俺に
『櫻井くんを見てるとわかるよ。
私は、櫻井くんが好きだったから
櫻井くんを見てた。
その櫻井くんの視線の先には
いつも大野くんがいたの。』
『……………まじ……で…………?』
『私は、好きな人がもし、女性でも
好きなら好きでいいと思う。』
『………って、
訳にも…………いかないでしょが。』
『そっかなあ………。
私たち、まだ始まったばかりだよ。
思春期なんだもん。
いろんな恋があってもいいと思うよ。
それが、私たちを大人にしていくんじゃない?』
なんだか、女の子の方が
このての事には大人だなって感心した。
感心してる俺に
『で、行かなくていいの?』
と、問いかける。