あ、ありえない。
ありえないだろ。
そんな理不尽………………
ありえないだろ。
俺には……
俺の将来も父ちゃんの会社も
こいつの手にあるってことか……………
潤くんは楽しそうに次から次と
「どんな所に住みたい?」とか
「どの辺がいいかな?」とか
俺に「料理を学んでおけ。」とか
「東京は開発途中だから色んな人がいるだ。」とか
「一緒に暮らすのが楽しみだ。」とか
俺にはそんな話どうでもいい。
この理不尽さを、
どこにぶつけたらいいのかを考えるので必死だった。
『ただいま……………』
『おかえり。
今日はいつもより遅かったわね。
もう、父さん帰ってきてるから
一緒にご飯食べちゃいなさい。』
と、台所から顔を出した母ちゃんに
『うん。』
とだけ返して
先ずは父ちゃんに、事の真実を尋ねようと
茶の間で晩酌中の父ちゃんの元に行った。
上機嫌でTVの野球中継を見ながら
『智、おかえり。
父ちゃんより遅いって珍しいな。』
と、呑気に言う父ちゃんに
『俺、
東京いくの?』
と、怒った口調で尋ねた。
『あん?
なんのことだ?』
と、惚ける父ちゃん。
『来年の話………
来年、俺…
潤くんと東京に行くの?』
俺の怒りが何なのかを悟った父ちゃんが
『え?
誰から聞いたんだ?』
と、飲もうとしていたグラスを置いた。
『潤くんが…………』
『そっか。』
『父ちゃんは……………やっぱり知ってたんだ。』
『いや。
知ってたと言うより
相談を受けてたんだ。』
『相談?
なにを?』
「まあ座れ」と俺に向かいに座るように促し
俺が座ると同時に
母ちゃんが俺のご飯を持ってきた。
『松本社長から、
潤くんを東京の名門大学に入れるには
高校のうちから、東京の進学校に入れないとダメだって話をされて………』
『それで?
それでなんで俺?』
『うち(智)はどうするって話になってな。
智は前々から中学卒業したら
父ちゃんの会社を継ぐっていってくれたよな。
でもな、これからの時代やっぱり学も必要なんだぞ。
だから……………』
『だからって東京?
東京じゃなくったって
ここにだって高校はあるじゃん。』
『潤くんをな………
一人じゃ………かわいそうだからって………』
『俺は?
俺はかわいそうじゃないの?』
『智が?
お前…………………
潤くんと仲がいいんじゃないのか?』
『仲がいいんじゃない。
俺は………………
俺は………………………
…………………潤くんの………………じゃないよ。』
なんだか悲しくなってきた。
俺の事を知らずに
俺がどんな理不尽な事をされてるかも知らずに………
俺と潤くんが仲がいいと
思い込んでる父ちゃんに腹が立って
悔しくて
悔しくて…………
涙まで伝い落ちてきた。
『………智、
お前…………………
無理してたのか?』
『………………………』