『父ちゃんな。
お前が元気に生きていて
笑っていてさえくれれば
それで十分なんだ。』
と言って
俺に「我が儘を言われたことなんてない。」
と、父ちゃんは笑うんだ。
父ちゃんたちに心配をかけて………
辛く、苦しい思いをさせて……
挙げ句に、「好きな人と一緒に暮らす。」
って言って家を出た。
それも、同性の恋人の元に…………
こんな我が儘を、
我が儘なんかじゃないって言うんだ。
感謝してもしきれない。
TVを見ながら晩酌をする父ちゃん。
TVに突っ込みを入れて笑ってる母ちゃん。
俺は、カレーを頬張りながら
幸せな家だなって思った。
『ねえ。
今日は泊まっていってもいい?』
と、俺が言うと
『うん?
翔くんはどうした?』
と、父ちゃんが心配して聞いてくる。
『翔くんは、今日宿直なんだ。』
『そうか。
じゃあ………ゆっくりしていきなさい。』
と、焼酎のお湯割りをグビッて飲み終えた。
『智の部屋そのままにしてあるから
いつでも寝られるわよ。』
と、母ちゃんが父ちゃんのカレーをもってやって来た。
『うん(知ってる)。
ありがとう。』
『そうよ。
大事な話があったんじゃないの。
昨日の件…………
どうだったのよ?』
TVを見ていた母ちゃんが
急に思い出したように言い出して
『なんの話だ?』
と、父ちゃんがあたふたしてた。
『昨日、翔くんのお母さんなんだって?
やっぱり、「同棲解消しなさい」って
話だったでしょ。』
それで、傷心の俺が帰ってきたと思ってるんだ。
『…………その…………反対だった。』
『『反対?』』
二人がキョトンとしてるから
『………ねえ、父ちゃん。
家にもう一人家族が増えてもいい?』
と、尋ねてみる。
『家族?
犬か猫でも飼うつもりか?
家にはカーギーがいるから
もういらんぞ。
それとも、智が面倒見るのか?』
って、母ちゃんと同じ反応が返ってくる。
『うん。
俺が面倒を見る。
俺の弟として面倒見るから……』
『弟?
もう、性別まで決まってるのか?』
『……う……うん……………。』
俺の説明はあまり上手とは言えないけど
話して聞かせているうちに
二人は目を丸くして
『どういうこと?
いいの?
ほんとにいいの?
どうするの?
どうしたらいいの?』
と、慌て出した。
翔くんを養子として迎えることに
まさか、翔くんの家が許してくれるなんて
考えもしなかったよね………
それって…………事実上………
俺達が、人生の伴侶になるってことだから……
『……………ごめんね。
俺ってば……………
親不孝…………だよ……ね………
父ちゃんと、母ちゃんを
じいちゃん、ばあちゃんにしてあげれない………』
と言う俺の言葉に
『智は今、幸せなんじゃないのか?』
と、父ちゃんが尋ねる。
『幸せだよ。
凄く幸せだよ。
翔くんと、一緒にいられて幸せなんだ。』
と、即答した。
『そうか。
じゃあ……いいじゃないか。
智は、父ちゃんたちの宝なんだぞ。
その宝が、今幸せだって言うならそれでいい。
それが父ちゃんたちへの親孝行なんだぞ。』
と、言って
俺の頭を、グリグリと何度も何度もなで回した父ちゃん。
俺が今にも泣きそうな顔をしていたからなんだろうな。
『母さんが寂しい思いをしてると思ったら
たまに飯でも食べに来てやったらいい。
翔くんと一緒に……いいな。』
『………う、………………うん。
父ちゃんたち……………
後ろ指…………刺されない?』
それが心配なんだ。
拉致された子供の親っていうだけで
どれだけ嫌な思いをしてきたか
俺は知ってるから………
さらにこれ以上……………
俺たちのことで……………嫌な思いをさせたら………
『何を今更…………
そんなこと、屁のカッパだ。』
と、父ちゃんが笑う。
それも豪快に「屁のカッパだ。」
だって…………
俺は泣きながら笑って見せた。