『やっぱり………
焼いてないし、バターも付いてないパンに
コーヒーもない朝食ってあり得ない。』
俺は、パッサパサのパンの耳を
チョビッと食べては唾液で食道に送る作業を試みた。
どうやっても旨くない。
俺の態度に彼が怒って
『勝手に食うんじゃないよ。
これでも、俺にしたら上等なんだよ。』
と、俺からパンの袋を奪い取って
口の部分をゴムで縛った。
『……………それ食ったら
マジで出ていけよな。』
と、俺を一瞥すると
じみーにまたちょっとかじってはモグモグと
時間をかけて食べだした。
時間をかけて食べると
このパッサパサのパンが甘くなったりすんのかな………
『え~。
これいらないの?』
と、お金の山を指差した。
「400万だよ。
こんだけあったら
こんなパッサパサの不味いパンじゃなくて
焼きたてのパン食べれるよ。
それに、コーヒーだってスープだって付けれる。
なんだったら朝から肉だって食べれるよ。
ほらほら……いらないの?
ほんとに、いらないの?
たった、2、3ヶ月かくまってくれるだけでいいのに………」
と、念を込めながら彼を見つめてたら
『………………お前さ。
どんなヤバイことしてきたの?』
と、顔を上げて俺の顔をみた。
『…………ヤバイ…………こと?』
「ヤバイことって……………なに?」
俺がポカーンと天井を見てたら
『………だから、追われてるんだろ。
この金が原因なんじゃないの?
返して
命乞いしてこいよ。
悪いこと言わないから…………』
と、真面目な顔をして
真剣に俺を諭してる彼。
「へ…………?
命乞い?
だれに?
なんで?」
意味がわかんない。
なんで命乞い?
………金が…………原因…………?
………あ…………もしかして………………
この人、俺を犯罪者か何かと勘違いしてる?
もしかして…………
悪の組織に追われてるって思ってる?
それとも、警察?
俺…………そんなこと言ったっけ?
追われてる…………って言ったっけ?
…………忘れた。
でもいいや。
『………………わかった。
わかったよ。
出ていくよ。
出ていけばいいんだろ。』
でも、ただで出ていくのは
しゃくにさわる。
彼が、俺を犯罪者と思っていたんなら
それを利用させてもらおうじゃないか。
『……出ていって……
俺は、あいつらにすぐ見つかるんだ。
そして、拷問の上に殺されて
バラバラにされて
東京湾に捨てられるんだ。
そして、俺は失踪したまま社会から忘れ去られ
冷たい海の底で君を恨むんだ。
「あの時、俺をかくまってくれてさえいれば……」
って……………
君は悪夢に襲われて
俺を追い出したことを後で後悔するんだ。
その時にはもう遅いのにね…………
…ふふふ…ん』
拷問されて海に沈むところを
自分で言っておいて想像したら
本当に怖くなって力なく笑った。
まあ、あいつに見つかったとして
拷問されて海に沈むことはないけど…………
俺の自由はなくなるな……………
『はああ~
………………わかった。
わかったから。
ただし、一週間。
一週間だけだからな。
いいな。』
彼が、俺の事を哀れんでくれたのか
とうとう俺と一緒に住むことをOKしてくれた。
一週間って言ったけど
まあ……………なんとかなるだろ。
ふふん。
ラッキー。