『出してよ。
出せ。
父さん。
出せってば!』
俺がどんなにドアを叩いても
びくともしないこのドアの向こうで
『ダメだ。
お前に自由を与えたのは失敗だった。
私の指示に従えないなんて
少しは反省しろ。』
と、父さんの声。
それだけ言うと立ち去った。
わざわざ、ニューヨークまでやって来て
ちゃんと話合うつもりで来たのに
俺の話など、はなっから聞く耳のない父さんは
婚約破棄の件も気にくわなかったようで
俺が何かしたんだろうと勘ぐっていた。
飛んで火に入る夏の虫とはこのことだよね。
俺の方からやって来たんだから………
約束の一年まで数が月あるからって
安心してたんだ。
父さんが約束を破らないだろうって
思ってたのに………
やっぱり父さんは普通じゃない。
「くそー。
皆、心配してるだろうな。
何も言わずに来ちゃったもんな。
くそー。」
何度叩いても叫んでみても
この扉はウンともスンとも言わない。
突然、黒人の大男に担がれて
この部屋の投げ込まれたから携帯もないし。
外部との通信方法もない。
有るのはただひとつピアノだけ。
「ピアノ弾いてろってことか……。
はああ~………………
どうしよう…………」
俺の頭じゃ
この先どうしたらいいのかわからない……
ドアに凭れて踞るしか出来ない俺。
「スーパーマンでもスパイダーマンでも
通り過ぎないかな………」