大野が鼻唄を歌い
俺もいつのまにか一緒になって歌ってた。
「この歌って………
誰の歌だっけなあ………
確か、4人組のバンドで……………
そう言えば…………最近見てないなあ………」
と、思いつつ
『これって誰の曲だっけ?』
と、歌い出した大野に聞いてみた。
『え!?
……し……知らない。
………俺………ただ…
な…なんとなく歌ってただけ……だから……
………誰か……なんて知らない。』
と、大野が言う。
「まあ………世間知らずのこいつが
知ってるわけないか
鼻唄なんて、なんとなく出てくるもんだし
どっかで聴いたことがあるものが
不意に出てきただけか………」
『ところで…………
このまま家に帰る?
それとも飯食べてく?
どうする?』
と、大野に聞くと
『そうだね。
なにか食べて帰ろうか。』
と、大野が答える。
『…………そう言えば………
お前、本当カップ麺食べたことなかったの?』
『うん。
母さんが、"体に悪いから"って………………』
と、言って黙ってしまった。
『あ。
ごめん。
思い出させた。』
たった今、お母さんの墓参りに
行ってきたばかりなのに
俺のバカ。
と、俺は運転中にもかかわらず項垂れた。
すると、
『……………翔くんってさ………
本当に優しいよね。』
って、大野がうっすら目に涙を浮かべながら
俺に綺麗な笑顔を向けてくれた。
正直………「綺麗だ。」って思った。
運転中じゃなかったら
抱き締めてたと思う。
「いやいや。
男だし………
いくら女装してたって
男だし……
間違えるな俺。」
俺は、頭を激しく振った。
『なあ。
いい店があるんだけど
そこいかないか?』
と、誘ったのは俺。
『いいよ。
どこでも……』
『じゃあさっ。
そんなかわいい格好してるんだし、
俺たち夫婦なんだし
もう少し………言葉使い変えようか。
大野は、もう"俺"は無しね。
"私"って言って
俺は…………う~ん………
さとし…………だから…………さと………こ……
智子(さとこ)と呼ぶことにする。』
『うん。
いいよ。
わかった。
ふふふ………って言うか
もともと櫻井智子になってる。』
『え?』
『マンションの契約の時に
妻 櫻井智子って書いた。』
って、大笑いしてる大野。
くだらないことしてるのに楽しそうだ。
って待てよ。
マンション借りるのに、
普通住民票とか出すよな。
…………………どうやったんだ?
ってか…………
マジで………
こいつは何者なんだろう……………