『はああ~
はらへったー。』
俺は、ペッタンコのお腹を擦りながら
疲れた足を引き摺って家路を急ぐ。
「家に確かどん兵衛が残ってたはず。
あれを今日は麺だけ食べて
スープは明日、冷飯を突っ込んで雑炊にしよう。
これで二度美味しい。」
なんて考えながら歩いてた。
俺は、売れない漫才師。
櫻井翔 27才。
コンビでやってるんだけど
相方はそれなりに売れてきて
ピンで番組に出てたりするのに。
俺にはなんのオファーもない………
俺は、いつもいつも金に困ってる。
たまに先輩が奢ってくれるけど
そうあることじゃないし。
相方が同情してこずかいをくれたけど
俺の自尊心が邪魔をして
そのこずかいを投げつけて帰ってきた。
「プライドなんて捨てて
貰っとけばよかった。
プライドなんて糞のたしにも
なんねえのに……
今更、おっせー(遅い)よな。」
『あー…………
はらへったーなあ………。』
口から出る言葉はこればかり。
俺は、いつもひもじい生活を送ってた。
「お前なら、ホストの方が金になるんじゃねーか?
女がほっとかねーだろに。」
って、先輩に言われて
俺も、もう限界かもなって思ってる。
でも先輩。
ホストになるには、もう遅いんだよ。
俺は、なにがしたいんだろうなあ………
どこに向かってるんだろう………
大学まで出してもらったのに
こんな宙ぶらりんで…………
自分が情けない…………
うつ向きながら歩いてる俺の足下に、
人の足が突然写った。
『おっと、
危ねえなあ………
踏むとこだったじゃん。』
と、上手にその足を避けることができたが。
その足の持ち主は
俺の言葉になんの反応もなく
そいつは、歩道に足を広げて壁に凭れ項垂れていた。
「え?
うそ。
死体?
こんなところで?」
俺は、そいつの様子を伺うためにしゃがみこんだ。
「え?
まさか………
寝てる?
うそだろ………」
よく見ると微かに肩が上下している。
すすけたTシャツにボロボロで汚れたGパン
どうみても、みすぼらしい格好したそいつは
布の鞄を大事そうに抱えて寝てた。
「まじかよ。
もしかして酔っぱらい?
でも、酒臭くはないよなあ……」
このままじゃ風邪引くぞ。
いくら6月とはいえ
まだまだ、外で夜を過ごすには寒いだろ。
『おーいい。
おきろ~
こんなとこで寝てると風邪引くぞ。
ってか身ぐるみ剥がされるぞ。』
と、話しかけた。
が、全くといっていいほどの無反応。
「………体調…………悪いのか?」
こんなみすぼらしい格好の奴が
金目のものが有るようにも思えないし。
なにが心配かって
寝顔が超がつくほど綺麗なの………
いくらみすぼらしくたって
変なやつに、お持ち帰りされるんじゃないか……
そっちの方が心配になるほどの美形。
でも、どう間違っても男は男だ。
「まあ………どうなったところで
俺には関係ないか。
俺は、ちゃんと忠告したからな。」
と、言うと
かまわずにその場を離れた。
暫く歩いてみたものの……
やっぱり気になって
引き返してしまった。
それが俺たちの出会いだった。