黙って聞いていた智のお父さんが
『………櫻井くん。
君が、智に友達以上の感情を持ってることを聞いてね。
若いときの気の迷いってこともあるし
ましてや、智はあんな経験もしてるしね。
お互いの将来の事を考えて
櫻井くんのお母さんと話し合い。
智の事は黙っていようと決めたんだよ。
君たちの気持ちを無視して………
ごめん。』
と、謝った。
『でも、これだけはわかってくれ。
俺たちの決断は
間違ってたかもしれない………けど
子供の事を一番に考えて
決めたんだよ。』
『………………』
俺と潤くんは黙っていた。
怒っていたとか
ショックだったとかじゃなく
…………今さら…………
そんなことどうでもよかったんだ。
兎に角、智が生きていて。
智が生きていただけで
俺たちは嬉しかった。
まして、
健太が智だってわかって
智が健太だった………
それだけで俺たちは嬉しかった。
俺たちは記憶を失っていても
引かれ合うんだってわかって
凄く嬉しかった。
お父さんたちの話は続き
『………私達が、
人生最大の大嘘をついたのにも
訳があるんだ。』
と、言う。
『智が、飛び降りて
頭を強く打ったことで
一ヶ月そのまま目覚めることがなくてね。
やっと目覚めた時には
自分が何者かを失っていた。
俺たちのことも分からず………
なのに、唯一自分の名前が
監禁されていた当時呼ばれてた
"ユウタ"って事を思い出し仕掛け
咄嗟に、"健太"って
一緒に入院していた
"矢野健太"くんの名前をだしたんだよ。
ユウタなんて……呼ばせない……』
『……………なんで………
なんで………
なんで……あの子は"ユウタ"って…………
自分を苦しめてた名前なのに………
なんで……………』
と、お母さんが泣き崩れて
お父さんが優しく背中を擦ってた。
『…………………
智は……………自分を………嫌ってた………
自分を…………
汚い人間だって……………
俺たちと違うって………
ずっと……………泣いていた。
だから……………
違う人間になりたかったんだ。』
と、俺が言う。
「それにしても………
ユウタって………」
『………最近の健太がね。
凄く明るくなったんだよ。
田子先生を家庭教師につけてから
楽しそうで
それって………………
田子先生ってよりも
櫻井くんの影響だったのかな?』
と、お父さんが俺を見て笑った。
『…………俺たち…………
喧嘩もしたんです。
1度、別れたりもして。』
『そう…………』
と、お母さんが涙を拭きながら頷き。
『でも、
俺達のこと気にかけてくれてたのは
田子先生だった。』
と、答えた。
俺たちは、智の記憶がいつ戻るかわからないし
記憶が戻ることがいいことなのか
………………わからない。
でも、無理矢理思い出させないように
智が知らないなら
また、最初から作りあげていけばいいことだと思い。
健太が智であることを
健太には言わないと約束をして
大野家を去った。
帰り道
『なあ。
俺にも会わせろよ。
その、健太になった智にさ。』
って、潤くんが嬉しそうだった。