『ところで、
マジでお前………名前は?』
と、翔くんに言われ
『………矢野…………健太………』
と、俺は名乗った。
『そうか。
健太くんは、携帯持ってる?』
と、言って
自分の携帯を出して
アドレス交換しようとしていた。
『うん。(持ってた)
でも、捨てた。』
家を出ると直ぐに
バス停のベンチに置いてきた。
俺の携帯なんて
なんのデーターも入ってないし
ただの、俺の位置確認のためのものなんだもん。
『はああ~?
捨てた。
なんでさ?』
と、また呆れた声をあげられた。
『だって…………
見つかるから…………』
と、俺は唇を尖らす。
『見つけてほしくないの?』
『うん。』
と、首を縦に振った。
だって、また家に帰ったら
俺は軟禁状態になる。
部屋から出ただけで、かーちゃんが
「どうしたの?」
「どこいくの?」
「なにするの?」
って、着いてくる。
外に出るときは家族と一緒。
誰とも接点がなく
俺には自由なんてなかった。
また、そんな暮らしが始まるんだ。
俺は孤独だったよ。
友達もいないし………
ただ、絵を描いて過ごすだけ。
そんなところに
戻りたくない。
……………そう思っていたら突然。
『お前………
やっぱり一度帰れよ。
親を心配させたらダメだ。
携帯も探しにいくぞ。
ほら、服きろ。』
と、翔くんに言われた。
『なんで?
「家出」だって置き手紙もしてきたよ。』
「冗談でしょ…………
今もどるわけないじゃん。」
『だめだ。
俺、そう言うのダメだから………
頼むから……
親にちゃんと元気でいること
どこにいるか位、連絡してくれ。
親の気持ちも考えてやってくれよ。』
翔くんの顔が真剣で
尋常じゃない。
『どうしたの?
急に…………』
俺が戸惑っていると
彼は、真剣なまなざしで
俺に携帯を差し出した。
『わかった。(仕方がないなあ……)
家に連絡すればいいんだよね。』
ちょっと不貞腐れながら
差し出した携帯を受け取った。