『ねえ。
しないの?』
俺の腕の中で抱え込まれてた彼が
モゾモゾと動き出して
顔を出して聞いてきた。
『…………うん。
もうしない。』
彼の体を放して立ち上がった。
『なんで?
翔君、俺を買ったんだよね。』
『買ったって………
売った買ったじゃなくてさ。
ここにいたけりゃいればいいよ。
智じゃないって分かったから
もう、君を抱かない。』
そう………
もう、抱かない。
智を裏切りたくないから………
『なんで?
いいの?』
『俺が好きなのは智だから。
君じゃないって分かったから。』
『ふーん。
俺、稼げないじゃん。』
『体売って稼ぐ自体おかしいって気付けよ。』
『だって、俺…………
学もねーし、
働いたこともねーし、
どうやって生きていけばいいかわかんないんだもん。
手っ取り早いのが売りだったんだよね。』
って、軽く言う。
『お前は…………
そんな優しいもんじゃないぞ。
病気もらったらどうすんだよ。』
『え?
病気になったりする?』
彼は驚いて俺を見た。
『知らないでやってたの?
やべー。俺………移ってないだろうな。
今まで何人の人とやったの?』
『……………一人』
と、指を一本立てた。
『どんな人だった?』
俺の問に俺を指さして
『翔君。
病気持ってる?』
『え?俺。』
『うん。』
『経験あるって言ってたじゃん。』
『うん。それはずーっと昔の事。』
『そうか。
じゃあ、体売ったって言っても
俺だけか。』
彼が「うん。」と頷いた。
『よかった。
もう、二度とすんなよ。
って俺が言うのも変だけど。』
『うん。
変だね。』
『でも、あーいうことは
本当に好きな人とだけにしな。
いいなっ。』
『翔君が言うのは
やっぱり変だよ。』
『ははは………
ごめん。』
『ところで、マジでお前の名前は?』
『………矢野…………健太』
『そうか。
健太君は携帯持ってる?』
俺の携帯を出して
アドレスを交換しようと思ったのに
『うん。
でも、捨てた。』
『はああ?
捨てた?
なんでさっ』
『だって、見つかるから』
そう言って唇を尖らせた。
『見つけてほしくないの?』
『うん。』
彼は首を縦に振った。
携帯を捨てた…………か…
見つからないように………
智が、誘拐されたとき
携帯が捨てられてなかったら
すぐにでも見つかったんだろうに………
ふと、智の両親が
狂わんばかりに智を探してた光景が頭を過った。
親は心配してるだろうに………
それも、大病した子なら尚更だ。
『お前………
やっぱり一度帰れよ。
親を心配させたらダメだ。
携帯も探しにいくぞ。
ほら、服きろ。』
『なんで…………
「家出」だって置き手紙もしてきたよ。』
『だめだ。
俺、そう言うのダメだから…………
頼むから…………
親にちゃんと元気でいること
どこにいるか位、連絡してくれ。
親の気持ち考えてやってくれよ。』
置き去りにされて
不安と心配で狂いそうな思いを
俺は、知ってるから…………
『どうしたの?
急に…………』
彼が、戸惑っているけど
俺の真剣な眼差しに
『わかった。
家に連絡すればいいんだね。』
と、渋々俺の携帯から家に連絡をいれた。