『智君のこと教えてよ。』
と、智にそっくりな彼が言う。
どこから話したらいい?
どう話たらいい?
何を話たらいい?
俺は、戸惑いながら
少しづつ話していく。
俺達は子供の頃からの友人で
俺の他に、松本潤、二宮和也、相葉雅紀という友がいること。
いつも5人で遊んでいたこと。
中3の時に智に告白したこと。
初めて体を重ねたこと。
智が病院に入院してる間に
突然、姿を消したこと。
などを話した。
勿論、智が誘拐されて監禁されてたことは言えなかった。
静に、じっと俺の話を聞いていた智が
『それじゃあ…………
忘れられないよね。』
と、俺を見て呟いた。
『はっきり失恋した訳じゃないから
いつまでも心に引っ掛かるのは当たり前だよ。
翔君は、今でも
智君が好きなんでしょ。』
智と同じ顔で言われると
錯覚しちゃいそうだ。
「翔君は、おいらのこと好きじゃないの?
おいらは好きなのに………」
あの日、花火の下でした会話が甦る。
『…………他人事みたいに言うなよ。』
『だって、他人事だもん。』
『おんなじ顔で言うなよ。
切なくなる。』
『…………似てるのは仕方がないじゃん。』
『……………』
『じゃあ、
智君ってどんな人だった?
教えて』
智と同じ顔で俺の顔を覗き込んで言う。
『…………智は……………
智は………』
俺は、ゆっくり目を閉じて
智の記憶を手繰り寄せる。
『………智は……………
……静かで…………
穏やかで………
争いを好まず………
争うなら自分を犠牲にする人。
そばにいると、それだけで周りが癒されていくって感じ………
でも、トロいわけじゃなくて
運動オンチってわけでもない。
何をさせてもひょいひょいと器用にこなし
俺なんかよりずっとうまくやる。
だからって自慢するわけでもない。
口数は少ないけど
回りをよく見ていて
さりげなく手を差し出してくれるって感じ。
俺ら5人が仲良かったのは
智がいたから………
智のあのほわんとした雰囲気があったから……
4人が智を好きだったから
成り立っていたんだと思う。
可愛かったんだ。
爆笑して顔を覆う姿も
恥ずかしそうに微笑む顔も
俺を見て……………
微笑む………顔も…………
「翔君」……って…………呼ぶ声も…………
……………………ううっ……………』
思い出したら………
涙が………止まらない。
そんな俺を、智に似た彼が
ソッと包み込むように抱き締めて
『翔君…………
翔君…………
しょう………くん…………』
と、智と同じ声で俺を呼びながら
一緒に泣いてくれた。
しばらくたって落ち着いてきて
涙も止まった頃。
『………きみは?
君は本当はなにもの?』
と、俺はおかしな質問をする。
彼は、彼でしかないのに
ほんとに智じゃないのか
確認したかった。
『なにもの?
か……………
俺は……………なにものなのかなあ…………
俺、つい最近まで…………
外に出たことがなかったんだ。』
『え?
どう言うこと?』
『俺…………
俺、病気だったの。
でかい手術をして
やっと動けるようになったんだ。』
『……病気?』
『うん。
脳腫瘍。
ほら。』
そう言って、髪の毛を少し上げ傷痕をみせた。
『小児ガンで、病院暮しが長くってさ。
ちゃんと学校も行ってないの。
だから、友達なんていない。
体がこんなんだから
かーちゃんが心配症で………
やっと、動けるようになっても
危ない危ないってさ。
俺もう二十歳よ。
なのに一人で買い物すらしたことなくて
それで家出したの。』
『ええ~っ
今は?
こんなことして大丈夫だったの?』
『こんなことって?』
よくよく考えてみると
彼は、裸の素肌にシャツを羽織り
ベットに二人寄り添うように座って話し込んでる俺達。
『いや………えっと………』
『………セックス?』
『…………そんなはっきりと口にしなくても………』
「こいつは、デリカシーがないのか?」
『もう、治ったって言ってるじゃん。
それに初めてじゃないって………』
と、笑う。
『そ、そうなんだ…………
そっか。』
そうか…………
彼は、やっぱり智じゃなかったんだ。
よく似た
他人のそら似………ってやつ………だ。
どこかで期待していた俺。
でも、ふっと懐かしい匂いがして
記憶が甦る。
「智っていい匂いがする。」
「ボディーソープの匂いでしょ。」
「違うよ。智の匂い。
甘い匂いがする。」
…………………
そうだ、この匂いは…………智の匂い。
顔が似てると匂いも似るのか…………。
そう思いながら
彼を抱きしめた。