智くんが、置いていったノート。
祈るような気持ちで
表紙を捲った。
目に飛び込んできたのは
「きたない」と大きく
何度も何度も跡をなぞった文字。
鉛筆で何度もなぞった文字は黒々と
所々切れていた。
まさに智くんの心の叫び。
怒りや哀しみ、
どうしようもない苛立ちが
そこにはぶつけられているように感じた。
監禁時、何があったのかは想像するしかないが、
まだ、子供の彼が受けた暴力は
自分を否定しないではいられなかったんだろう。
次のページも
次のページも
暗号のように「汚ない、汚ない……………」
「死ね。死ね。死ね。…………………」
「お前なんて消えてなくなれ。」
と、なんページにもわたって書いてあった。
智くんの絶望が見える。
そのうち、「なんで?なんで?………」と、
自分の今の状態を憂いてる。
突然、事件に巻き込まれ
理不尽に曲げられてしまった人生を憂いてる。
ページを進めると
「おいらは、普通じゃないね。」
「翔君、ごめんね。」
「翔君、おいらの事忘れていいよ。」
「翔君………………翔君……………」
と、彼の名前で埋め尽くされたページにたどり着き。
その後、
詩のような言葉
「おいらは鳥になりたかった。
狭い部屋でいつも天窓から空を見上ながら
あの青い空を自由に飛び回り
翔君の肩に止まって
チュンチュンって頬っぺたにキスをする。
そんな夢ばかり見てた。
あの日も、おいらは薄れ行く意識のなかで
翔君に思いを馳せた。
おいらを忘れていいよ。
おいらも忘れるから…………
翔君のこと…………………
もう、思い出せないから………………」
智くんの、彼に対する思いが伝わってきて
涙が出た。