「智の再生に、翔君が不可欠なのかもしれない。」
そう言って、私達は翔君に賭けて見ることにした。
お父さんに智の見舞いに来るとき
翔君も誘ってみて
もし、断られたら
翔君を巻き込むことはしない。
でも、翔君が二つ返事で「はい。」って言ったなら
智にとっては、荒治療かもしれないけど
翔君に会わせてみよう。
なにかの変化があるかもしれない………
そんな、すがるような思いだった。
案の定、智は翔君を拒み
「見るな、来るな」と翔君を遠ざける。
でも、智が現実に目を向けた。
何を考え
何を見ているか、わからないような智が
翔君の登場でハッキリと意識をもった。
壁際に隠れるように小さく小さく体を丸めて
翔君を拒み続ける智。
智の気持ちがわかった気がする。
自分を卑下して
「おいらは汚い。」って言いながら
本当は、
本当は……………
こんな自分でも、受け入れて欲しいんだ。
こんな自分でも、人から「愛されている」と言う
"確信"が欲しいんだ。
私は、お父さんを促して病室を出た。
後は、翔君
任せたからね……………。
二時間ほどして病室に戻ると
部屋から笑い声が聞こえてきて驚いた。
この部屋に笑い声が響くなんて…………
智が、笑って
屈託のない無邪気な笑顔を翔君に見せている。
私が見たかった
智の笑顔がそこにあった。
たった、二時間の間に何があったと言うのだろう。
生気のない、
どこを見てるのかわからないような目をして
絶望の淵に佇んでいたような智が、
翔君と、笑ってる。
………涙が出てきた。
涙が喉を塞いで声がかけられない。
夢でも見てるのか…………
声をかけたら煙のようにかき消されるんじゃないか……………
そう思っていた。
なのに………
『おっ。楽しそうだな。』
と、父さんたら
なんの躊躇いもなくズカズカと部屋に入っていって
智の頭を撫で
『とーちゃん、痛いよ。』
と、智に払い除けられていた。
むきになって
『そんなことないだろ。
撫でただけじゃないか。』
と、むしろ大袈裟に撫でまわす。
『とーちゃんの力だと撫でるが
叩くになるの。』
そう言って応戦してる。
『おっ。
小生意気な事を言うようになったな。』
と、父さんたら、嬉しそうに
智にちょっかいを出して
智も楽しそうに応戦してる。
翔君がこっちを見て近づいてきて
『智君、相葉ちゃんの手紙を読んで
爆笑してたんです。』
と、教えてくれた。
『俺…………
智君に、俺の気持ち伝えました。
俺、智君がずっと好き。
それは、今もこれからも変わりません。
俺達の事、許してもらえませんか?』
翔君が私を見て頭を下げた。
可愛い翔君………
ごめんね。
大人は狡くて……………
『…………翔君…………
智を……………ありがとう………ね。
智の笑った顔…………
…………本当に…………
何年かぶりに見たわ。
……………
ありがとう………』
『……………』
『でもね。
あなたも、智もまだ若いのよ。
これからいっぱい出会いがある。
智に…………
同情して言ってくれてるんだって
ことにしておくわね。』