とーちゃんもかーちゃんも
おいらが…………なにをされてたか………
知ってる…………の?
知ってて………言ってるの?
救い……………?
おいらに救いの手があるの?
救いってなに?
わかんないよ。
おいらバカだから、わかんないよ。
おいらに、ねーちゃんの分も背負わせないで。
抱き締めてくれるとーちゃんの腕から
体を捩らせて抜け出した。
とーちゃんが、呆れたように息を吐き
『智……………。
本当は、とーちゃん…………
かーちゃんと相談して…………
翔君…………
連れて……来たんだよ。』
と、
驚いた。
『え?!』
『翔君を外で待たせてるんだ。』
『……う……そ……
…嘘だ。
……い………や………嫌。
……………嫌………だ。
会いたくない。
やだ。
会わない。
……嫌だ。』
おいらは壁際に隠れるように小さくなって
「嫌だ、嫌だ。」って言ってるのに
かーちゃんが翔君を部屋に入れた。
翔君の顔を見ることなんてできない。
おいらを哀れむ顔も
汚いものでも見かのような顔も
どんな顔も見たくない。
おいらは顔を埋めて
より一層小さくなる。
堪えきれず溢れる涙は
袖が吸いとっていく。
翔君が、おいらを見ている。
『………やだ。
やだ。
見るな。
………おいらを…………見るな。
おいらを…………
おいらを……………みるな………。
うううっ…………』
と、膝を抱えて声が漏れてしまった。
『…さ……と……し………くん。』
翔君の声。
懐かしい声。
頭の中でいつも響いていた声。
優しく、慈しむような声。
翔君がおいらを「大好き」って
言ってくれた時と同じ声。
思い出してしまったじゃないか。
溢れる涙が止まらない。
『うううっ……………
………来……る………な。
…………来るな。
……………うううっ…………』
翔君が近づいてくる気配に
もっともっと小さくなろうとする。
…………………聴きたくない。
翔君の声が……………怖い。
だから、耳を塞いだ。
『…………智…………』
おいらを呼ぶな。
『……………さと……………し…』
翔君の手が伸びてきて
おいらの手に触れた。
『やめろ。
やめてくれ。
おいらは、
おいらは、智じゃない。
翔君が、思ってる智は死んだんだよ。
おいらは智じゃない。』
手を振り払い
もっと小さくなる。
『…………智
智は…………
智だよ。』
翔君の声が震えてる。
『違う。
翔君が好きだって言ってくれた
智はもういないんだ。
おいらは…………
おいらは………
汚い……………』
おいらは汚いんだよ。
翔君とは住む世界が違うんだよ。
だから、おいらに構うなよ。
そう言ってやりたいのに声が涙で詰まる。
『………智
智………
………智…………』
と、言いながら
翔君の手がおいらの頭を優しく撫でる。
『………智っ…………呼ぶ……な。』
その手をまた、払い除ける。
『智…………
ずーと、………信じてた。
生きて………もう一度、
……抱き………締める………日を…………信じてた。』
「え?」
翔君………
翔君も………泣いてるの?
なんで?
なんで翔君が泣くの?
『おいらは………
………汚い。
……汚い………んだよ。
………翔君に………大事にされる
…………資格なんて………ない。
おいらは、日の当たるところを
…………歩いちゃいけないんだ。』
『………なんで………
なんでそう思うの?』
翔君が、また手を伸ばして
おいらの手を握った。
『翔君は知らないんだ。
おいらが…………
おいらが……………』
その手を離そうと、もう一方の手を出したら
その手も絡め取られ
両手が翔君の手に握られてしまった。
離れようと身を捩ったのにびくともしない。
すると、バランスを崩しておいらは前に倒れ
自然と翔君の胸に頭がついて
そのまま抱き締められてしまった。
『そうだね。
智がどんな思いで屈辱に堪えていたのか
どんなことをされたか
どんなに恐怖だったか
俺は知ることが出来ない。
計り知れないほどの絶望だったと思う。
死にたくなるほどの絶望だよね。
でも………
こうして会えたよ。
もう一度、抱き締めることができた。
奇跡ってあるんだよ。』
いくらおいらが体を捩らせて足掻いても
翔君は、放してくれなかった。