「………しょ………う…………
……………しょう………………くん……………
………おい……………ら……………………
………た…………す…………け…………
…………おい………ら……を…助け…て……………。」
………………俺を呼ぶ智の声がする。
なのに………何も出来ない俺……………
俺の記憶が戻ったからと言って
智が帰ってくる訳じゃなく。
智を失った喪失感が俺を襲い続け
毎夜のごとく見ていた優しい幸せな夢は
悪夢に変わった。
土の中から聞こえてくる智の声に
俺はいつも悲鳴を上げて目覚める。
みかねた母が、俺を精神科に通わせるようになったけど
こんなことしても意味ないのに………
この悪夢は、智が戻って来なければ終らないことを
俺は知ってる。
高校生活も、群馬から地元に戻り
潤と同じ高校に転校した。
何度か女の子に告白されたけど
「俺には好きな人がいるから」と断った。
『潤。』
『うん?』
俺の目の前に座り、問題集を解いている潤が
顔を上げずに返事だけする。
『俺、お前たちに
隠してたことがあるんだ。』
『うん?
なに?』
やはい、もくもくとペンを走らせる。
『…………俺さ………智の事…………』
『ああ。
付き合ってでもいたの?』
と、言って不意に顔を上げてこっちを見る。
『………俺より先に言うなよ。』
『だって、見てたらわかるよ。
お互い好き合ってるんだろうなって……
多分、二人も知ってるよ。』
二人とは、雅紀とニノの事。
『え?』
潤はなおも続けて
『翔君のデレ顔と、智のツンデレな態度を見てたら
そりゃあ、わかるよ。』
と、笑った。
『そっか。
そっか。』
と、俺は頷き
『うん。』
潤も頷いた。
俺は、智を思い出しながら
『大好きだった。
今でも……
どんな智でも…………大好きだ。
あの、ふにゃんって笑う智も
口を尖らせて拗ねる智も
たまに悪態つく態度も
物静かな所作も
大好きだった。』
『うん。
俺だってそうだよ。』
そうだった。
潤も智を好きなんだろうなって………
わかってた。
だから、
聞いてみた。
『………………智は………………生きてると………
………思……………う…………か…?』
って。
そう、あれから3年が経っていた。
なんの手がかりも
なんの進展もないまま
俺達は今、大学受験の真っ只中にある。
智のご両親は、
今でも智の無事を願って待っている。
俺達だって同じ気持ちだ。
でも、
俺達の周りは、容赦なく変化を求める。
いつまでも時間を止めてはいられないのだ。
自分の将来の事を考えて
動き出さなければいけない。
この頃になると
智が、生きていてどんな状態にあるのかを考えるより
智がどこに棄てられているのか
そればかり考えるようになっていた。