『智。
ま~だ、食べてるの?
そろそろ行かないと遅れるわよ。』
キッチンから、かーちゃんが呆れた顔を覗かせた。
『うん。わかってる。』
最後のプチトマトを口の中に放り込み
『…………ごちそうさま。』
と、ちゃんと手と手を合わせて軽く頭を下げると
食べ終わって食器を流し台に持っていく。
風呂上がりのとーちゃんがビール片手に
キッチンから出てきて俺とぶつかって
『………智
そんな慌ててどこに行くんだ?』
と、聞いてきた。
『花火だよ。
花火。
これから、皆で見に行くんだ。』
俺は、玄関に向かって走りながら答える。
『そうか。
いつものメンバーでか?』
と、とーちゃん聞くから
『そうだよ。
じゃあ。いってきます。』
と、言って玄関に止めてある自転車を表に出した。
『気を付けてね。
早く帰ってきなさいよ。』
と、言うかーちゃんの声に
『わかってる。』
とだけ返して走り出した。
今日も一日暑かった。
その暑さは夕方になっても衰えず
蝉時雨のなかおいらは自転車を走らせ
友の元に急いだ。
太陽が斜めから差し込んで
オレンジ色に辺りを染めるころ
おいらは待ち合わせの駅に着いた。
駅の構内は、人でごった返し
浴衣姿の女性や子供達もいて
いつもと違う雰囲気を醸しだしている。
過ぎ去る夏を名残惜しむような花火大会。
特に中3の俺らにとっては
この日を境に受験モードに入るわけだからね。
思う存分楽しまなきゃ。
『ごめん。待たせた。』
人の波をかき分け、おいらは友人達を見つけて走り寄る。
『大丈夫だよ。まだ、二人が来てないし』
と、爽やかな笑顔を向けたのは櫻井翔君。
『そうなの?』
おいらは、もう一人の友人の松本潤君に聞いてみると
『うん。』
と、頷いた。
しばらくキョロキョロと辺りを探っていると
『あっ、来た来た。
こっちこっち。』
潤君が声をあげて手招きをすると
『わりーい。わりーい。
こいつがさ、とろくてさ。』
と、二宮和也君が相葉雅紀君と一緒にやって来た。
『ばか。とろくねーだろ。
あそこでばーちゃん一人に出来ねーだろうが。』
と、怒鳴る相葉ちゃん。
また、困ってる人がいて
親切にしてやったんだろうことは容易に想像がつく。
相葉ちゃんは正直者で、常に優しいから。
『じゃあ。揃ったところで
行きますか。』
と、翔君がおいらの肩に手を回した。