翔君の要請で、お母さんが俺を迎えに来てくれた。
俺の包帯姿を見て顔を歪ませて
『大変だったわね。
まだ、痛いの?
大丈夫?』
って心配してくれた。
『すみません。
忙しいところを態々…………』
と頭を下げたとき、瞬間ズキッってしたけど笑って見せた。
俺が車に乗れたらなんてことないのに
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
翔君があまりにも心配するから。
昨日の件もあるしね。
翔君の気持ちも考えるとわからなくもないし………
俺だって「もし、翔君に…………」って思うと
ゾッとするもん。
「どうか、もう何事も起こりませんように………
翔君の身に災いが起こりませんように………
お願い。神様。」
電車で帰る道すがら
お母さんはいろんなことを話してくれた。
かーちゃんのこと………
翔君のこと…………
翔君が好きな料理………
お母さんは、話上手だ。
電車のカタンコトンと言うとリズムに微睡んでいると
『………智君。
翔に、悟空描いたことない?』
と、聞かれた。
『あっ、あります。
中学の時。』
『あれね。凄く大切にしてたのよ。
ボロボロになっても持ってたんだけどね。
残念な事に、和くんが間違えて捨てちゃって
随分、落ち込んでかわいそうなぐらいだったのよ。』
って、
翔君が、俺の存在を失ってどれだけ悲しみ、苦しんだかを教えてくれた。
昨夜の翔君が目に浮かぶ。
お母さんはずっと隣で翔君の事を見守ってたんだね。
『………お母さん。
俺、ちゃんと言いたいことがあったんです。』
『あら。
なにかしら』
『お母さん
…………………翔君を産んでくれて…………
…………優しい、素敵な人に育ててくれて……
ありがとうございます。』
と、俺は頭を下げ
ずっと伝えたかった事を伝えることができた。
最初、キョトンとしていたけど
『うふふっ。
やだわ。』
って、かわいい顔で笑ってた。
デパートの地下で買い物をして
家に着くとガラス屋さんに電話して
散乱した窓ガラスを破棄して
床の血痕を拭きとった。