眠い目を擦りながら降りてきた潤。
『おはよう』
と、声をかけると
『うん。おはよう』
と言って、キッチンに行くと冷蔵庫から麦茶を取り出して
コップに注いでダイニングテーブルに持ってきた。
前は注ぎ口からダイレクトに飲んでいたのに
何度注意しても直らなかったのに
翔くんが暮らしはじめてちょっとづつ変化してる
これって潤も気を使ってるって事なのかな………
潤はこの家に居心地の悪さを感じてるのかもしれない。
俺の勝手な行動が、
「家を出て、事務所の合宿所に入りたい。」なんて
言わせてるのかもしれない。
俺が、とか
翔くんが、とかじゃないって言ってたけど
そうとしか考えられない。
事務所に通うのだって
そんな無理な距離じゃないんだから………
麦茶を椅子に座って一気に飲み干すと
『はあ~………』
って、大息ついて
テーブルの上にうつ伏せてボーッとしてる。
そんな姿を俺と翔くんはソファーに座って見ていた。
『……疲れてるみたいだね。』
俺が、声をかけて
キッチンで朝ご飯を温めた。
『…………う~ん…………
大丈夫。』
潤はゆっくり体を起こして伸びをした。
『ねえ。翔さん。』
『うん?』
読んでた新聞の端から顔をだして答えた。
『お願いがあるんだけど………。』
『なに?』
『今日さ、送ってくんないかな。
事務所まで……………』
『あっ、いいよ。
何時に出るの?』
『1時には行かなきゃ。』
『駄目だよ。
潤は、潤の好きでやってるんでしょ。
自分の足で行きなさい。』
俺が、潤の朝食のプレートをテーブルに置きながら言う。
『そっか………
分かった。』
と、翔くんは潤に返事をする。
『翔くん、いいの?』
『いいよ。ちょっとマンションにも行ってきたいし』
って、親指をたててコーヒーを口に運んだ。
『ありがとう。
じゃ、お願いします。』
そう言って、潤は朝ご飯を食べ始めた。
潤が、翔くんにこんなお願いするなんて
どう言うことだろう。
何か企んでる?
『じゃあ………
いってきます。』
翔くんの車の助手席に座って潤が手を振る。
『うん。
何時頃になるの?』
俺ですら、まだ乗ったことのない
翔くんの車の助手席。
先を越されてちょっと悲しい…………
でも、気にしてないふりをして聞いてみたんだ。
『今日はそんなに遅くなんないよ。
7時位には帰れると思うよ。
夕食お願いします。』
と、言うと潤は翔くんの車で出掛けていった。
『何か、話があるんだろ。』
車を走らせて直ぐに翔さんが聞いてきた。
『流石に勘がいいね。翔さん。』
『智に聞かれたくない話か?』
『智、直ぐに心配するからさ』
『心配するような話なのか?』
『………………………』
潤が黙りこんだ。
『俺、お前に謝らなきゃな。』
『え?…………なんで?
何を謝るの?』
潤が不思議な顔をして俺を見る。
『俺が、お前の場所を奪った。
智を…………お前から奪った。
ごめん。』
『…………なにそれ?
……………今さらじゃね。
どうしたの?』
『お前が………出ていくって………
どう考えても俺のせいだろ。』
『ふふっ………
考えすぎだって
言っただろ翔さんのせいじゃないって。
翔さんに智の事、任せていいんだろ。』
『………ああ。』
『俺ね。
ずーっと智の事を守らなきゃ
早く大きくなって
智に恩返ししなきゃって………思ってた。』
『………………』
『翔さんが現れて……………
智が幸せそうで………
俺は、やっぱり智にとっては
子供でしかないってわかった。
子供は、子供らしく将来の事を考えようって思ったら
なんにもないことに気づいたんだ。』
『……………』
『そんなときにJ事務所の話が出て
自分がどんなもんなのか、知れたくて受けてみた。
興味がない訳じゃなかったから
そしたら、秋からのドラマやユニットが決まって
それが楽しいって思えて
もっと、もっと上手くなりたいって思うようになった。』
『それが理由なのか?』
『うん。
同じユニットのメンバーがいる
学校に編入して、合宿することで絆を深めるんだ。』
『もしかして、デビューとかするのか?』
『うん。』
『そうか。
じゃあ、智にその事をちゃんと話せばいい。
きっとわかってくれる。』
『うん。
それより…………
俺が、気になるのは…………和の事なんだ。
その事で話がしたくて………』