『智?!』
翔くんが俺の背中に手を伸ばす。
『やだ。
熱い、痛い。触らないで…………』
踞ったおれは錯覚してしまい
翔くんの手を払い除けた。
あの日を思い出してしまったんだ。
あっという間にあの日に戻るほど
まだ俺の心に強い恐怖を与えるんだ。
『……………智。』
心配そうに翔くんが俺を見つめてる。
『……ご………ごめん。……
やっ…………ぱ………り……無理………
…こ……怖い……………』
俺を抱き起こして翔くんが
『大丈夫。
ゆっくり治していこう。
大丈夫だから。
ね。』
ずーっと「大丈夫。大丈夫。」って
俺に呪文をかけるように言うから
だんだんと落ち着いてきた。
リビングのソファーに座り
俺の肩を抱きながら
『行きなり乗用車は無理だったのかもね。
まずは…………
バスなんかどう?
乗ったことある?』
俺を励まそうと翔くんが一生懸命考えてくれる。
『ない。
車全般に乗ったことない。』
と、答えると
『じゃあ………
バスに乗ろう。』
『バスがダメだったら?』
『智。
克服したいんだろ。
克服して俺と伊豆にドライブしよう。
それを目標に頑張らない?』
『………………』
俺には克服できそうにないよ。
あの日は俺の重い十字架で、一生背負って行くんだ。
車に乗れなかったからって
今まで…………困ったことないし………
『智。
諦めるの?
諦めちゃうの?』
『……………』
『いつまでも…………恐怖に支配されてるなよ。
自分から避けてすぐ諦めて………
もう、やめろよ。
俺が一緒に戦ってやるから………
いつも支えてやるから………』
翔くんの気持ちが伝わってくる。
翔くんが俺を本当に大事に思ってくれている。
そう思うと頑張れるような気がする。
『じゃあ………
バス…………乗ってみる。』