『お前……櫻井の家に要るんだってな。』
音楽室に向かう道のりで和に聞いてみた。
『え?なんで知ってるの?』
『櫻井から聞いた。』
『ふ~ん…………
翔兄と仲がいいんだね。』
『はああ~?俺が………冗談はやめろ。』
『だって、俺が従弟とか下宿してるとか……
翔兄から聞いたんでしょ。』
『そりゃあ………ちょっとは
他の生徒よりは話す機会は多いけど………』
『翔兄は駄目だよ。』
『は?何が………?』
『翔兄………カッコいいからモテるけど
絶対に付き合えないよ。』
『付き合うって………
そんなんじゃねーし………』
『翔兄には…………
ずっと忘れられない人がいて………
その人を待ってるから。』
和が悲しそうに呟いた。
その待ってる人って………智のこと………
そのうち音楽室に着いて
ピアノの前に座った。
『じゃあ……歌うね。』
『おう。聴かせろ。』
ピアノの奏でるメロディーが切なくて
一瞬でヤバイと思った。
♪『消えぬ 消えぬ
五月雨の後 渇かぬ涙の痕
消せぬ 消せぬ
闇夜に浮かぶ 愛しい人の影
夕焼け河原を歩いてる
君と一緒に笑顔を連れて
今日の晩御飯なにしょう
小さな凄く小さな凄く普通のしあわせ
死んでいったあなたは僕の心にしみて生きた。
他の人を愛しても
他の人でしかありません……
いくど………』
ピアノの音が止まった。
『どうしたの?』
和の優しい声が心にしみてくる。
俺は和の歌を聴きながら
知らずに泣いていた。
和が俺の隣にきて
そっと手を握ってくれた。
俺の涙は止まることなく流れ出して
なんで泣いてるのか自分でも理由がわからない。
暫く二人
何も語らず
ただ触れた部分から
じんわりと頑なな心を溶かしくれてるように感じた。
『松本くんて………
イケイケかと思ったら………違うんだね。』
『……………』
『泣いたのは、
俺の歌のせいじゃないよね。』