中学の卒業式から高校の入学式までの1ヶ月間は
中学生でもなく、高校生でもない宙ぶらりんの状態。
高校受験も終り、ゆっくり羽が伸ばせる。
春からの新しい生活が楽しみだった。
俺はある人が気になっていた。
同じクラスで、どちらかと言うと目立たない存在の子。
でも、笑った顔が超可愛くて
いつもチラチラと友達の肩越しに見ていた。
近くを通った時、いつも何をしてるのかと思い
覗いてみたら
ノートに絵を描いていて思わず
『お前、絵が上手いんだな。』って
初めてまともに声をかけた。
俺の声に驚き赤い顔して
「そ、そんなこと………ないよ。」って
言って、俯くからそれ以上話が続かなかった。
そいつは、よく俺の部活を覗きに
グランドに来ていて
ボールを追って、走り回る俺達を楽しそうにみていた。
やりたいなら部活に入ればいいのに。
って思た事もある。
また、話したいなって思って
『俺に、悟空描いてくれない?』って頼んだら
次の日、描いて持ってきてくれた。
『超上手いのな。宝物にすんね。』
と言うと「うん。」って笑った。
その顔が忘れられず
こいつをいつも見ていたいなって思った。
でも、もうすぐ卒業。
卒業したらバラバラだ。
もう、会えなくなるんだ。
と、思っていたら
同じ高校を受験することがわかって正直驚いた。
そんなに頭がよかった印象はないけど
頑張ってたのは知ってたから
一緒に受かったらいいなって
心のなかで祈ってた。
俺もあいつも合格して
もしかしたら、もっと仲良くなれるかもしれない。
そんな期待にワクワクしてた。
そんなある日、衝撃的な事件が起きた。
新聞に『春休みの悲劇』と言う見出しで
一家を乗せたワンボックスが
高速道路でトラックに追突され炎上。
男女4人の死亡を確認、残る幼児と、男性が意識不明の重体。
それが俺の気になっていた奴だと知ったとき
俺の目の前が真っ暗になった。
子供の俺は何もできず
遠くで起きた事故のために会いにも行けず
高校の入学式にも顔を見せることはなく
いつのまにか名前が名簿から消され。
彼が死んだと言う噂も流れた。
俺は彼の家に行ってみたが
表札は違う名前になっていて
中学の担任から預かっていた彼の卒業アルバムを渡せず
形見のように持っていた。