智さんが俺の部屋のドアを閉めた。
一瞬見せた哀しげな智さんの顔………
俺は何も言葉が見つからない…………
追うことすら出来ない…………
ただ、玄関で立ち竦む。
足元でじゃれていた"さとし"が
ドアをカリカリと引っ掻いて吠える。
……まるで「追いかけろ」って言ってるみたいに………
俺は、急いでドアを開けて智さんの部屋のチャイムを押した。
応答はなく静まり返っている。
エレベーターの前に行くと
智さんが買って来たパンの入った袋が落ちていて
外に出て行ったことを知った。
何処に行ったんだろう…………
早く誤解を解かなきゃ…………
不味いことが起きる前に…………
智さん…………どこ?
携帯で連絡をしてみたけど、電話に出ない。
何度も何回でも掛けるのに応答はなく
不安が過る。
何処に………
どうしたらいい?
彼らなら………
なにか知ってるかも知れない。
そう思うに、俺は二宮さんと松本さんの連絡さきを知れない。
「くそー!」
と、エレベーターの前でウロウロしていたら
エレベーターが開いてそこから二宮さんが出てきた。
『何してるんですか?
ゴリラじゃあるまいし』
と、軽蔑した目で俺を見て智の部屋に向かう。
これこそ天の助け
『あっ!二宮さん?
お願いが…………』
と、二宮さんに近づいた。
『…………何ですか?気持ち悪い………』
怪訝そうに俺を見て答える。
俺は………
俺の正体がばれたこと、
誤解して、今しがた俺の前から消えた事を話した。
二宮さんが携帯でなにかを調べて
『…ちぇ……今、電車で移動中だ』
と言う。
智さんの携帯の"GPS"機能で場所がわかると言う。
すぐさま俺たちは車で智さんの後を追った。
この"GPS"は遼が最後に智さんを拉致ったときに
智さんの命を救ったんだと車のなかで話してくれた。
飛び降りる直前に何があったのかを
二宮さん本人の口から聞いた。
そして、二宮さんが鞄から見覚えのある携帯を取り出した。
『これ………誰のかわかる?』
途中で事故の渋滞にはまり
気持ちは焦るのになかなか前に進まない。
そんなイライラのなかで持ち出した携帯。
『これ、
……………遼の携帯だよ。』
と、二宮さんが言う。
『屋上で、智を襲っている遼を蹴ったときに
倒れた勢いで落としたところを拾ったんだ。』
俺が受け取ろうと、手を伸ばしたときに
その携帯を引っ込めて
『あんたは……………
智の………苦しみを………知ってるか?』
と、聞かれた。
俺は黙って前を見据えた。
『ここには、……………』
と、言葉をつまらせる二宮さん………
『あんたは…………
智の苦しみに向き合えるか?』
と、唇を噛んで
『俺は…………
智の名誉を守るために………
俺が…………これを隠し持っていたんだ』