『寒かったろ。
直ぐに暖まるから……』
と智が部屋に入るとエアコンを着けて。
『ココア入れてくるから待って…て……
いい!ちゃんと待っててよ。』
と念を押して出ていった。
隙を見て帰るつもりだったのが、ばれてたか。
俺は返事もせずプイと顔を背けた。
部屋の中は整然としていて違和感を感じる。
「………そうか………
もう行っちゃうんだ…け……」
鼻の奥がグッと痛んだ。
『はい。ココア。
温まるよ。』
俺の手にマグカップを握らせ
智も俺の隣に座ってココアをフーフーしてた。
『………』
俺が黙ってココアをずーっと見つめてるから
『なに?……………なに考えてるの?』
『……………』
『さっきから黙んまりで…………』
だって………一言でも口を開いたら………涙が出る。
智が俺のカップをテーブルに置いて
抱き締めてきたから
『や、やめろ……辞めろよ。』
と、智を突き飛ばし涙が一粒ぽたっとこぼれ落ちた。
『……ニノ?』
『……お前なんか………さっさと……
……京都にいっちまえ!』
立ち上がって部屋を出ていこうとしたら
腕を捕まれ、引っ張られ
そのまま智の腕の中に収まった。
『ちゃんと話……聞いて。
ちゃんと話すから………』
暴れる俺をぎゅっと抱き締めて言うから
あきらめて大人しく聞くことにした。
『………逃げないから、話聞くから……離して……』
『だめ。また泣くから…………』
『………結局、泣かせるような話なんじゃん……』
『………ごめんね。』
「くそー。」俺は智にしがみついた。
智がゆっくりと今までの経緯を話してくれた。
中2の時に某芸能事務所に入ったこと。
ダンスと歌を始めたら意外に嵌まってしまったこと。
先輩達の後で踊ってTVにも出てること。
社長と先輩の推薦で京都に行くことになったこと。
等々、俺の知らないことばかり。
『……知らなかった………』
つい呟いてしまった。
いつも一緒だと思ってたのに………
智の事はすべて知ってると思ってたのに………
違ったんだ。
『ニノは高校受験で忙しかっただろ。
俺、頭悪いからさ。
かーちゃんが心配して事務所に履歴書送ったんだよ。
「このままじゃ、うちの子プー太郎だわ」って』
『…………』
『ニノには夢があるじゃん。
医者になるって夢が…………
だから本当に頑張ってるよね。』
俺の「医者に成」は、医者が一番稼げるからであって
どーしてもなりたい訳じゃなかった。
進学率の高い高校だから、うかうかしてると蹴落とされる。
だから負けたくなくてがんばった。
の結果がこれか…………。
智を好きな事を自覚するのが遅すぎたんだ。
『ニノが頑張ってるを見て。
俺もニノと同じぐらい頑張らないとって思った。』
『それが………京都?』
『京都には舞台でいくんだ。』
『舞台?』
『そう………座長なんだ』
『座長!』
もう訳がわからない…………
俺の思考は停止状態。
『…………ニノ?
大丈夫?』
『なんか………疲れた。』
フフフと智が笑って俺に口付けした。