前回記事のエゾマツ「①前置き」で、今のところ街なかでは4ヶ所で4本だけしか見つかっていないことを述べましたが、今回は残りの3本を紹介します。
苦戦が予想されましたから、一番ありそうな場所である歴史の古い農業高校へ行ってみました。
除雪された雪の奥にある、中央の1本だけがエゾマツです。 周りの木々は鬱蒼たるドイツトウヒ(ヨーロッパトウヒ)の幅広い林となっていて、エゾマツは辿りついた校舎の直前に植栽されていました。
上の写真はこれも歴史のある音更神社ですが、入口に1本ありました。 ご神木のハルニレ(樹齢450年超とか)枝に重なってしまいますが、木姿全体を写すためのアングルです。
最後の4ヶ所目ですが、意外にも家の近くの川向こうの土手筋にある個人宅にありました。
土手側から見て、生垣の隅に1本植栽されていました。 この木の裏側(住宅側)半分は、枯れたせいなのか枝が全て切られています。
これ等の場所の木を基に、エゾマツの特徴を見て行きます。
葉の表側です。 エゾマツの葉長はアカエゾマツよりも長く、成人男性の爪の長さ(約1.5cm)を少し超えるものであり、アカエゾマツの方は爪の長さ以下が多いです。
大きな特徴としては、切り口が平らであること(トドマツもそうです)で表側と裏側に違いが出てきます。 そして、表側は濃い緑色の一色に見えます。
葉の裏側は、気孔線があるので一律に白っぽく見えます。 また、葉の付け根には葉沈があり、枝と直角に葉が出ています。 更に枝の表面は、1年枝は滑面で2年枝も色合いは変わりますが、滑面は変わりません。(説明上、写真を反転してあります)
1年枝で大きくして見てみます。
マツ科でもトウヒ属に共通するのですが、葉の付け根に葉沈があり、本州に分布のトウヒやこのエゾマツでは、葉が枝と直角に出ているそうです。
※北海道に多いトドマツは、モミ属ですから葉沈はなく、付け根は吸盤状になっています。
ここで、アカエゾマツの葉の裏についても見ておきます。 アカエゾマツもトウヒ属です。
葉の長さや生え方の疎密、切り口、気孔線の違い等々もありますが、葉の裏側で決定的な違いが見られると思います。 エゾマツの枝の表面は滑面でしたが、アカエゾマツの枝表面には赤く細かい毛が密集しています。 そして、余程成長が盛んな枝でない限り、2年枝の表面はくすんで黒っぽく見えます。
1年枝を大きく撮りました。 エゾマツの滑面とは違うことがよく分かると思います。 実際には、ルーペでもないと細毛は見えませんが、赤い色でも区別はつきます。(生育期ではなく夏以降)
また、葉沈はありますが、枝と直角にはなっておらずより先方向きになっています。
エゾマツの話に戻ります。
↑↓記事冒頭の農業高校の1本についてです。 エゾマツを遠目で見上げると銀青色なので、プンゲンストウヒと間違えやすいと思います。 葉の裏が気孔線で白いですから、表の緑色と混ざって銀青色に見えるからです。(トドマツも同じ理由で、エゾマツに見間違いし易いです)
濃い緑のドイツトウヒ(ヨーロッパトウヒ)が殆んどなので帰ろうとした時に、前の写真の銀青色が見えたので、除雪で出来た雪山を越えたところ、この名札があってエゾマツと確認できました。
続いて、冬芽の様子です。
マツ科に共通の鱗片に包まれています。(ドイツトウヒやプンゲンストウヒのような、はっきりした花模様にはなっていません)
これは、「①前置き」に出てきた永祥寺のエゾマツから持ち帰って、水挿ししておいたものです。丁度、芽吹きをするところで、膜状の鱗片を押し出すところです。
エゾマツには、
「③エゾマツカサアブラムシ」 もあります。
追記 : 2018年8月12日
本文冒頭の、農業高校のエゾマツ成木の夏場の姿を撮ってみました。
繰り返しますが、中央の1本だけがエゾマツで、左側周囲はドイツトウヒ(ヨーロッパトウヒ)の林が繋がっています。
木の先端から右側の枝先に茶色系の球果が付いています。(左からドイツトウヒの枝が伸び長い球果が緑白色に光っています)
超ズームで球果を大きく撮ったものですが、まだ緑色を残しながら茶色になっています。 エゾマツ・ドイツトウヒと同じ1年型のアカエゾマツの場合ですと、まだこの時期には暗紫色をしています。
雄花の痕跡の残っている部分がありました。 枝は、3方向に分岐した部分が今年の枝です。