田原陶兵衛(十二代) 萩焼御本茶碗:陶磁器 | 野崎淳之介 『玉石混淆 美術館』 blogsite

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田原陶兵衛(十二代)(たはらとうべえ Tobei Tahara
大正14年—平成3年

昭和から平成にかけて活躍した陶芸家の巨匠です。
十代・陶兵衛の次男にして、十一代・陶兵衛の弟であり
昭和31年に十二代・田原陶兵衛を襲名しています。

昭和56年には山口県指定無形文化財に認定されています。


そんな十二代・田原陶兵衛 作 「萩焼御本茶碗」です。
径はおよそ11センチ
 



見込みです。
この茶碗は見込みにも胴にも美しい鹿の子紋(薄紅色の斑紋)が現れています。
所々に見える灰色の染みのようなものの
焼成時に出来上がった釉薬に由来するものです。
 



御本茶碗とは、元は桃山時代から江戸時代にかけて
日本からの手本をもとに朝鮮半島の釜山窯で焼かれた茶碗のことをいいます。
御本茶碗の御本とは「御手本」の意味なのです。

そして、大きな特色のひとつがこの美しい斑紋が現れることであり
現在では、この斑紋がある茶碗を「御本茶碗(御本手)」と呼ぶようになっています。
 

 

 



胴にも美しい鹿の子の斑紋が現れています。
絵柄などはなく、そのことがかえって斑紋を際立たせています。
 

 

 



逆側から見ています。
絵柄はありませんが、文字が記されています。
 

 

 



文字の拡大です。
「金婚 宗悦  宗逸」と書かれているようです。


文字通りの解釈でいけば、金婚とは結婚50年目の記念日のこと。
おそらく「宗悦  宗逸」という人物(宗悦が夫で 宗逸が妻?)の金婚のお祝いに
十二代 陶兵衛が焼いて贈った記念の茶碗なのでしょう。

 

 

 



高台部です。
高台脇には陶印が押されているのが解ります。
 

 

 



陶印(銘)の拡大です。
 

 

 



右側は参考資料です。
他の田原陶兵衛作品の画像から、
陶印部分だけ抜粋し借りて来てしまいました。

まさに一緒の印であることが解ります。
 

 

 



箱は共箱です。
 

 

 



署名です。
明らかに十二代・陶兵衛によるものです。
 

 

 



蓋の裏面には和歌が詠まれています。
この歌は田原陶兵衛が詠んだものか、宗悦・宗逸が詠んだものかはわかりません。
 

 

 



また、この「宗悦・宗逸」という人物も
現状では誰なのかはっきりとしたことはわかりません。



作品自体は間違いなく十二代・田原陶兵衛が焼いたものです。
そして友人(または依頼を受けて?)の記念日ために作り上げた
ある意味特別な茶碗であるといえるかも知れません。

やはり、シンプルな景色の中にある御本手の斑紋が美しい!!