南の島にきてから3日目ー。
朝のひんやりした気持ちのいい空気のなか、私はキャシーの部屋をノックして中に入った。
りえ「キャシー。おはよう!」
今日は以前から言っていた『秘密の場所』とやらへ、キャシーが連れていってくれることになっている。
りえ「今日もいい天気ですね、島を散策するにもってこいの……」
そこまで言って、私は足を止めた。
キャシーがまだベッドの中にいたからだ。
りえ「キャシー、どうしたんですか?どこか具合でも悪い?」
私はベッドの傍まで寄ると、そう声をかける。
キャサリン「……うーん……」
りえ「大丈夫!?苦しいの?」
うなされる声を聞いて、私は慌ててキャシーの顔を覗きこんだ。
キャサリン「……熱が……出ちゃって」
息も切れ切れに言うキャシーを見て、私は青くなった。
キャサリン「……今日は散策には……行けそうにないの。だから……キース兄様と……」
りえ「と、とにかく、リュークさんを呼んできます。待っててくださいね!」
私はそう言い残すと、走って部屋を出ていった。
リューク「キャサリン様!大丈夫ですか?!」
部屋に入るなり、リュークさんは心配そうにキャシーの傍に駆け寄った。
(……あんなに血相変えて……そうだよね、みんなキャシーを大事に思ってるから)
リュークさんと一緒に部屋に入ったキース王子も、キャシーのベッドの横に屈みこんでいる。
キース王子「……」
しばらくキャシーを見つめるキース王子。
(……キース様も心配そう)
私はそう思いながらも、夕日に照らされたキース王子を思い出して顔が少し赤くなる。
(い、今はそんなこと思い出してる場合じゃないってば!)
キース王子は、何か考え深げな顔をしながら無言でキャシーのおでこに手を当てる。
そして落ち着いた声でキャシーにひと言発した。
キース王子「……キャシー。何が望みなんだ?」
その言葉を聞いた途端、一瞬、キャシーの表情がギクッとしたように感じる。
(……どうかしたのかな?)
私は心配になって、もっとキャシーの顔をよく見ようとベッドに近づいた。
するとキャシーはパッと布団を頭からかぶって、苦しそうな声を出す。
キャサリン「あの……秘密の場所に咲いている、白いお花が欲しいの……」
(……白いお花?)
キャサリン「……りえと一緒に……探してきて!」
そう言ったかと思うと、ゴホゴホと咳をした。
りえ「だ、大丈夫ですか?!キャシー!」
するとベッドの横にいるキース王子が、大きなため息をついた。
キース王子「……仕方ねえな……ちょっと待ってろ」
そう言うと、ベッドを離れて出口に向かった。
りえ「ちょ、ちょっと待ってください!キース様!」
私は慌ててキャシーの部屋を出てキース王子の後を追った。
後ろからリュークさんも出てくる気配がする。
りえ「……白いお花って……一体どこに」
けれどキース王子は、ため息をはきながらそのまま前に進んでゆく。
するとすぐ横で、リュークさんの不安そうな声が聞こえた。
リューク「……お医者さまが到着するのは……今日の午後なのに」
りえ「そんな……午前中に、なんとか来られないのですか?」
リューク「隣の島を回ってから来られるって、さっき連絡が入って……もう既に出発されてるって……」
私はリュークさんの不安気な表情を見て、何かできることはないかと考える。
りえ「とりあえず、水分をたくさんとらせるとか……それまでに応急処置をしておかないといけませんね」
そしてリュークさんに向かって更に言った。
りえ「あと……何かお腹に入れた方がいいですね。そうだ! シェフにおかゆを作っていただければ……」
リューク「オカユ……?」
その言葉を不思議そうな顔をしながら、リュークさんは繰り返した。
(……そっか。おかゆって万国共通じゃないんだ)
私はリュークさんに向かって説明をする。
りえ「おかゆっていうのはですね……私の国では体調不良のときの定番メニューなんです!」
リューク「……なるほど。ちょっと教えてくれるか?」
リュークさんはそう言うと、私の方に近づいてきた。