(……でも、確かに毎回こんな感じなら、そう思うのも無理もないかも)
私はなんとなく苦笑いをしながら、キース王子の顔を見たのだった。
キース王子「じゃあ……ほら」
りえ「え……?」
キース王子はそう言いながら、私の前に改めて手を差し出した。
キース王子「だから……ったく、これだから庶民は。踊るんだよ! 俺らも」
りえ「……踊る?」
言われてハッとした私は、いつの間にかダンスフロアの中央部分にやって来ていて、こうしてキース王子にダンスを申し込まれている、らしいことがわかった。
私はおずおずとキース王子に向かって手を差し出す。
キース王子「お? やけに素直じゃねえか」
(……だって。一応、公衆の面前だし。それに……)
私はこのパーティにやって来て、ようやく自分の役割りをわかりかけたのだ。
(……どこ行っても騒がれる身を見てたら、なんだかちょっと同情したりして)
そう思うといつも面白くなさそうにしている表情の理由も見えてくる。
りえ「でも……私、ろくに踊れませんよ?」
キース王子「お前と初めて出会った日のパーティを、覚えてるだろ。いいから、黙って俺に従え」
そう言うなり片手はサッと肩に回され、もう片方の手は腰に添えられた。
私は正面から、キース王子の顔を見捉えることになる。
(……ダンスってなんでこんなに距離が近いの!)
ドキドキする私のことはよそに、キース王子は私を上手くリードしながら軽やかにステップを踏み始めた。
力強く添えられた手が、私を次の動作へと導く。
それが音楽にうまく乗って、自分もまるでダンスが上手なようにさえ思えてきた。
(……この前も思ったけど……キース様って意外にダンスが上手)
キース王子「足、踏むなよ」
りえ「ふ、踏んでなんか……」
キース王子「次でターンするぞ。腰を回せ」
りえ「えっ! そ、そんな高度な技……」
そう言ってる間に、いつの間にか私の体はくるっと回されてキース王子の手に収まった。
周りでは一斉に拍手が上がる。
キース王子「結構、やるじゃねえか」
りえ「えっ」
キース王子「まあ、俺の指導がいいからな」
言いながら、キース王子の息がかかる。
ちょっと視線を上げると、数十センチのところにキース王子の顔がある。
私はまともに顔が上げられなくて、真っ赤になりながら必死で平常心を保とうとしていた。
キース王子「なーに、赤くなってんだよ?そんなに離れてたら踊りにくいだろ?」
りえ「あ、赤くなってなんかいません……!」
キース王子「もっとこっちへ来い」
りえ「あっ……」
よろけた瞬間、私はキース王子の胸に顔をぶつけた。
慌てて離れようとすると、まともに至近距離で目が合う。
その瞳の奥はまるで吸い込まれそうで……。
りえ「……」
キース王子「……」
一瞬、見つめ合ったかと思ったら、その瞬間拍手が鳴り響いた。
(……あ、曲が終わったんだ)
私がしばらくぼおっとしていると、まだキース王子の胸の中にいるのに気づいて慌てて飛びのいた。
するとキース王子が、スッと私の手を取ると同時に言った。
キース王子「庶民の相手も……まぁ悪くねえな」
りえ「え……?」
その瞬間、私の手の甲にキース王子の顔が近づいて……。
キスをすると、パッと手を離して踵を返して行ってしまった。
りえ「えっ……」
私の心臓がドクンと脈打ち、続けてドキドキと大きな音がする。
(……今のって)
一瞬見えた横顔がほんのり赤かったのは気のせいだったのだろうかと、キース王子を目で追ったけれども、その時には人ごみに紛れてもう見えなくなっていたのだったー
*~*~*~*~*~*~*~*
題名 『やるじゃねえか!』
庶民のくせに中々やるじゃねえか!
まぁ、俺のおかげだろうけどな。
つーか……俺、パーティーでこんなに踊ったのはいつぶりだ…?
Keith