こんにちは
当店2階で開催中(4月1日まで)のビンテージ・ワークウエア展で展示されているワークウエア&ブランドを紹介していきたいと思います。
本日紹介するビンテージアイテムは現在のビンテージ市場でもワークウエアの王道として君臨している『SWEET-ORR(スイート・オール)社』のワークシャツです。
スイート・オール社と言えば画像のような、6人の男性が衣類を綱引きしているキャッチコピーが印象的ですが、その歴史は古くニューヨーク州ワッピンガーズ・フォールズで1871年にスイート兄弟(クレイトン・E・スイート&クリントン・W・スイート)とジェイムズ・オールによって設立されました。
ゴールドラッシュの時代にカリフォルニアに住んでいたオール氏は機械工や労働者の間にきちんと作られた見た目もよく耐久性のあるオーバーオールの需要があることに、いち早く気がつきました。
当時は実用的衣類の大部分をまだ女性達が都会の衣料品店の代理人から仕事をもらって家で内職として衣料を作っていました。
このように体系的ではなく不規則な方法で作られる衣類は、耐久性のある信頼できるワークウエアに対する需要を満たすことはできなかったのです。
当然、製品は劣悪で色もバラバラで形も職業に合っていなく、さらに生地は破けやすく、ボタンもあきれるほどに粗悪品でした。
現在では、原料をそろえてデニムパンツを作り、完成品を各地の小売店に納品するまでにかかる輸送時間はとても短く、コストも比較的安くすみますが、20世紀以前のアメリカでは、これらの原料や製品の移動距離は考慮すべき重要な点であり、費用もかなりかかりました。
当時最高品質といわれた特許を取得したリベット留めのXXオーバーオール(リーバイス社)を手に入れるのに、1/10オンス分の金(貨幣価値に換算すると160ドル程)を支払っていたことを考えると労働着といえど簡単には手に入らなかったことがわかります。
1871年の秋にオール氏は甥であるスイート兄弟と共に「ネバー・リップ(けして破れない)」オーバーオールの開発を始めました。
オール氏は職業が仕立屋だったため、材料を買い、型紙を起こし、やがて試作品であるオーバーオールを完成させると、翌日このサンプルをニューヨークに持って行き商人達に売れるかどうかの交渉に出ました。
すると商人達は「もし全てのオーバーオールをこのサンプル同様の品質で作り、手頃な値段で売れば商品としてのニーズはあるだろう」と保証しました。
この確証を得たオール氏はワッピンガーズ・フォールズに戻り、スイート兄弟(郵便局長)の助けを借りてアメリカ初のオーバーオール製造工場を建設しました。
工場には、当時最先端技術といわれた蒸気機関が導入され、1876年には250名の従業員が40馬力のエンジンで動くミシンを操作し、生産量は週に1万2000着にも及びました。
1879年ごろには、スイート・オール社製のオーバーオールはアメリカ全土で発売されるようになり、破けず、ボタンもちぎれない「ネバーリップ・オーバーオール」の名声を得ました。
しかも、XXオーバーオールはじめ他社製品よりもあらゆる点において優れていたにもかかわらず、値段も手頃だったため、特に最低賃金で働く労働者階級の人々に絶大な人気を誇りました。
1880年、数万着分の注文に追いつかないため、ニューバーグにブロードウェイに向かって150フィート(約45メートル)、コンコード通り沿いに275フィート(約83メートル)の大型工場を新しく建設しました。
スイート・オール製品は、現在の日本製の衣類のように縫製も綺麗で丁寧に作られています。
これは、創業者のオール氏が従業員を独立した一人の職人として雇っていたためであり、一人ひとりがプライドを持って仕事に従事していたからだといわれています。
当時の新聞記事に、当時フィラデルフィアで働いていた大工が屋根の上から誤って滑り落ちたが、オーバーオールのスパイクが引っかかり、空中にぶら下がった状態で救助されたと掲載されています。
この時、大工が着用していたオーバーオールがスイート・オール社のネバーリップ・オーバーオールでした。
成人男性一人を支えた丈夫さは、現在でも伝説として語り継がれています。
スイート・オール社はアメリカの衣料品業界に革命をもたらし、スマートで仕立てが良く、実用的な衣類を手頃な価格で提供することで労働者階級に数え切れない恩恵をもたらしました。
同社はオーバーオールをはじめ、パンタロン、シャツなどワークウエア全般を手がけており、どれもが丈夫な生地で作られて、最高級の糸で縫製されていて、当時としては珍しい顧客に満足してもらうことを常に意識し努力していたブランドでした。
創業者のジェイムズ・オールは1899年、クレイトン・スイートは1909年に亡くなりますが、彼らに敬意を払いスイート・オール社の社名は変更されることなく1965年にブランドが消滅するまで使われています。
上記画像のワークシャツは、1940年代中期ごろのスイート・オール社の物です。
スイートオール社製だけあって、デザイン・縫製・機能性まで考えられて作られています。
このシャツも、ブラウンの千鳥プリントが施されていて、ワークシャツとしては、とても洒落たデザインです。
首回りの生地へのダメージやスレから、かなりの期間着用されていたものと思われます。
しかしながら、ボディへのダメージは少なく、生地もしっかりしているので、前所有者の方は大切に着用されていたのではないでしょうか。
フロントはボタン止めのオープンタイプでベーシックなワークシャツの形です。
当時のシャツは主にタックインするため、着丈は長くとられています。
フロントポケットは丁寧に縁取りされたフラップ付きのタイプで、ワークシャツらしくペン挿しが設けられています。
1907年にレオ・ベークランド(アメリカ出身)が発明した、人工プラッスチックであるフェノール樹脂素材の通称「ベークライトボタン」が使われています。
ワークウエアに使用された年代は1930年代から1950年代と言われています。
左ポケット裏にはユニオンチケットが縫い付けられています。
これは、農協などの労働組合が認めたワークウエアということを証明しています。
裾サイドにはマチが設けられています。
マチがあるほうが年代的に古い感じがしますが、年代判別に重要なのがマチではなく、身頃両サイド裏のステッチワークです。
画像はチェーンステッチによる環縫いで、ステッチ幅も安定してきている40年代から50年代の物と推測されます。
また、この部分がシングルステッチの場合は1920年代以前のシャツだと判別できます。
袖のカフスはボックス型のシンプルなタイプでボタンは一個留めです。
袖はワンピース縫製が取り入れられた丁寧なつくりで、ワークシャツとしての頑丈さと機能が備わった仕立てです。
1940年代のワークシャツに見られる、ロングポイントと呼ばれる、長く外に向かってやや弧を描く鈍角な襟先が特徴です。
1940年代初頭まで使われていた通称「チンストラップ」も省略されています。
本日紹介した『SWEET-ORR(スイート・オール)』ワークシャツは、展示会場で御覧頂けます。
次回は『BOSS OF THE ROAD(ボス・オブ・ザ・ロード)』のウエストオーバーオールをご紹介します。
ありがとうございました。
今後も宜しくお願いします。
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