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今日は、第二次世界大戦中の501XXを紹介します。
少し、長いですが宜しくお願いします。
(ヴィンテージ S501XX 1942年製 バックポケット ペンキステッチVer)
こちらのジーンズは、大戦モデルのなかでも有名なディテールのバックポケットにペンキでステッチを施してある個体です。
本来、バックポケットのステッチには綿糸が使われていますが、大戦中の物資節約の強化運動が始まり、リーバイスジーンズの象徴でもあったカモメステッチを表現するため一部の生産ラインでは、オレンジのペンキでステッチを施していました。
このペンキステッチが施してあるのは、大戦中でも最初期のモデルで、数回の洗濯や経年劣化で薄くなってしまうので、結局は無駄な物あつかいされ、数ヶ月で廃止されてしまいました。
オリジナルビンテージで確認できる物は少なく、大変貴重です。
デニム生地は、約14オンスで以前の物に比べて2オンス程、重くなっています。
これは、物資の削減のため外見上の簡素化をしたリーバイス社が、せめて生地のクオリティーは上げようと提案し、コーンミルズ社に発注したものです。
現在のレプリカメーカーの様に中身に拘っていた頃のジーンズでもあります。
また、スレーキ(袋地)は生成りスレーキで、通常の物よりも厚みがある生地が使われています。
フロントボタンは、トップ・スモールボタン共に社名刻印のある1930年代の古いタイプが使われているので、大戦モデルでも初期型です。
大戦で有名な、リベットが省略されたコインポケットです。
ビンテージの年代を推定するのには、わかり易いディテールですが、これだけで大戦期の物と判断するのには注意が必要です。
この後、1940年後期から1950年代の501XXには、リベットを打ち忘れたイレギュラーが存在するのと、経年劣化により取れてしまった個体が存在するからです。
また、リベットは銅製ですが刻印がされていません。
これも、大戦中の501XXの特徴でもあります。
(ヴィンテージ 1947年製 501XX 銅製リベット)
画像は1947年製のリベットで大戦期とは違い、しっかり刻印されています。
バックポケットには、薄っすらとペンキステッチが施されています。
また、バックポケットは左右で若干大きさが異なり、歪な形で縫製も適当です。
これは、戦時下で徴兵や故郷へ帰省し(当時、縫製工場で働く従業員の多くは日系二世の方でした)、一時退職した者の人員確保のため、10歳~18歳のミシン経験の浅い者や素人同然の者まで雇うしか無く、また指導できるベテランも少なく、生産ラインのクオリティーは安定しませんでした。
1936年から使われている、片面BigE赤タブは大戦期でも省略される事なく付けられています。
大戦期の赤タブは、画像の物のように、独特の付け方をしているものが多いので、好きな方は赤タブだけで、大体の年代を予測できるみたいです。
簡単に付けられそうな赤タブですが、経験が無いと画像のようになります。(私自身、経験あり)
大戦期の隠しリベットは、銅に規制が掛かり、鉄製の物が使われています。
また、小ぶりで中央が少し膨らんだ形をしています。
これは、大戦期だけにしか見られないディテールで人気があります。
余談ですが、リーバイス社(コーンミルズ社含む)は戦争中に徴兵された従業員に対しても給料を支払っていたとされ、創業者の「良い製品は人の経験が作り出し、また受け継がれていく」という言葉の通り、従業員を最も大切にした会社でもありました。
ここからは、大戦中でしか見られない特殊なモデルを紹介していきます。
(ヴィンテージ S501XX 1942年製 トップボタン月桂樹ドーナッツボタンVer)
トップボタンに、当時流行っていた月桂樹柄のドーナッツボタンが使われていて、社名刻印などは無く、鉄製の既製品が使われています。
種類は色々あります。
・画像の物は月桂樹のツリーの間に☆の刻印が1個の「ワンスターボタン」と呼ばれます。
・☆3個のものは「トリプルスターボタン」
・真ん中の窪みが無い被せ月桂樹ボタン
・何も刻印されていない、無刻印ドーナッツボタン
など…
これらは大戦中、多くの衣料メーカーで使われていました。
私が普段、愛用しているシアーズ・ローバック社のデニムペインターパンツも、この時代のパーツが使われています。
スモールボタンは1930年代のジンク(亜鉛)で余ったパーツを使用した、大戦中でも初期に生産されたジーンズでしょう。
バックポケットは左右、大きさが違います。
また、ポケットの飾りステッチは元々ないタイプで、大戦中の501XXでしか見られないポケットです。
大戦中のレザーパッチには、ロットナンバーの頭にSが付きます。
これは、SIMPLE (シンプル)の略です。
隠しリベットは、小ぶりで中央が少し膨らんだ大戦中のもので、銅メッキされた鉄製の物が使われています。
赤タブは、片面BigEタブです。
セルビッジは赤耳(赤というよりはピンク)が使われており、大戦期の14オンスの重いデニム生地が使われています。
(ヴィンテージ S501XX 1942年製 スモールボタン 無刻印ドーナッツボタンVer)
この時代の501XXは、デニム生地の厚さと生地の染めが濃いので、良い色落ちをします。
こちらは、トップボタンが被せジンクボタンが使われていますが、スモールボタンは鉄製の無刻印ドーナッツボタンが使われています。
また、大戦モデルでは、珍しくコインポケットにリベットが打たれています。
デニム生地は、かなりムラのある粗い生地が使われています。
ポケットのステッチも、現代では間違いなくB品扱いされるであろう仕様です。
赤タブは両面刺繍されていない物が使われており、大戦期でも珍しい赤タブです。
(ヴィンテージ S501XX 1943年製 トップボタン月桂樹ドーナッツボタン&デニムスレーキ&股下クロッチリベット付き Ver)
こちらは、フロントポケットのスレーキ(袋地)に耳付きデニム生地を使い、1941年に廃止されたはずのクロッチリベット(股リベット)が付く珍しい501XXです。
本来、大戦中のリベットには刻印がありませんが、このクロッチリベットの刻印は& COと、だけ印字されています。
これは、会社と生産工場の意思疎通が上手くできていなく、余ったパーツを使ったと言うよりは、発注ミスによるイレギュラーな個体だと思います。
隠しリベットは大戦中でも中頃(1943年頃)に使われていた、銅メッキもされていない鉄リベットが使われています。
特徴は全体的にドーム形に膨らんでおり、中心部分が少し凹んでいるタイプで点字刻印されています。
片面 BigE 赤タブが使用されています。
(ヴィンテージ S501XX 1942年製 トップボタン月桂樹ドーナッツボタン&赤ストライプスレーキ Ver)
ポケットのスレーキ(袋地)には生成りスレーキにストライプの柄を施した手間の掛かる生地を使っており、シャツの切れ端を使用した物は、たまに見かけますが、このタイプは珍しいです。
トップボタンは月桂樹のワンスターボタンでスモールボタンは被せ部分だけジンク(亜鉛)で支柱は鉄製のものが使われています。
コインポケットはリベットが打たれていない、大戦中の物が使われていて、耳付きのレアな個体です。
バックポケットは、現在の日本の職人では、あり得ない歪な形をしています。
私は、このバックポケットを見るだけでビンテージかレプリカかを判断できます(笑)
銅メッキされた鉄製の隠しリベットは大戦期だけに見られるディテールです。
また、画像のようにリベットにスレキズがありますが、これは刻印ではなく、当時のミシン職人が未熟で何回も失敗して付いた、針キズです。
(ヴィンテージ S501XX 1942年製 トップボタン月桂樹ドーナッツボタン&ネルシャツ スレーキ Ver)
フロントトップボタンは大戦期の象徴でもある月桂樹ドーナッツボタンが使われています。
スモールボタンは1930年代から使われている、刻印の間に粒々がないマットな古いタイプが使われています。
また、ベルトループは少し太めの物が使われており、ウエスト周り下がチェーンステッチで上がシングルステッチのVステッチ処理された仕様です。
大戦期の特徴でもある、コインポケットにリベットが打っていない仕様です。
コインポケット口裏にも、セルビッジを使用しています。
大戦中の物資の節約のために、使われたネルシャツの余り生地を使ったスレーキ(袋地)で中々、見ることはできない個体です。
レプリカでも、ネルシャツを使った限定モデルは多くのメーカーから販売されていますが、オリジナルの希少価値は群を抜いています。
オリジナルビンテージでは、ポケットの形、赤タブの位置、縫製の仕方など個性があり、ひとつとして同じものはありません。
特に、大戦期のジーンズはイレギュラーが多すぎて、混乱してしまうが、そこが面白いところです。
本来、赤いラインが入ったセルビッジ(赤耳)が使われるが、こちらは白耳のままで生産されたデニム生地で出来ています。
デニム生地の生産工場や供給時期によっては、赤耳だけではなく、白耳も存在していました。
現在では、良いジーンズには殆んど、赤耳がありますが、当時はワークパンツだったので、このディテールに拘っている人など、少なかったでしょう…
(ヴィンテージ S501XX 1945年製 バックポケット 白タブ Ver)
こちらは、大戦後半(1945年頃)の501XX です。
フロントはトップボタンもスモールボタン全て、リーバイス製の物に戻ります。
フロントボタンはトップ含め4個ですがウエストの実寸が80センチ(32インチ)ほどあるので503XX(子供用)ではなく501XXです。
コインポケットは、大戦モデルお馴染みのディテールです。
赤タブは、経年変化により白くなる大戦期でも最後期の物が使われています。
このレーヨン製の白タブ(本来は赤)は1945年製の501XXだけに見られる希少なもので、白くなる理由は現在も判明されていません。
大戦期の隠し鉄リベットです。
こちらは、刻印なしの大戦中期のパーツが使われています。
(ヴィンテージ S501XX 1942年製 オリーブグリーン ヘリンボーン スレーキ Ver)
こちらは、当時リーバイス社が軍に納入していたとされる501XXで、特徴はポケットのスレーキにオリーブグリーンのヘリンボーン生地を使った軍物です。
コインポケットは樽型の底が浅い物で、ポケット内側サイドの生地処理は、切りっ放しなので解れてきます。
1947年に入ると、この部分は折込処理されます。
ステッチワークが、かなり雑です。
この雑さが、ビンテージでは味として表現されるので、不思議ではあります。
リベット裏も銅メッキなので、経年によりメッキが剥がれサビが生じます。
トップボタン・スモールボタン全て、リーバイス社オリジナルのボタンを使用しています。
コインポケットのリベットは省略され、サイドのステッチは1950年代に入ると見られなくなる、長いタイプの物が使われています。
股ステッチには、カンヌキ留されていない古い仕様です。
軍に納入していた一部のジーンズには、ステッチは勿論、赤タブも付かない、リーバイス社としては珍しいモデルでもあります。
大戦リベットは、鉄製で社名刻印のあるタイプが使われています。
軍に納入されていた物は、オンスが13.5オンスで一般の大戦期501XXよりも薄めの生地が使われています。
サイドのセルビッジは、赤いラインの入らない白耳を使っています。
大戦期の個体には、ここで紹介している物は、ごく一部でしかなく、まだまだ知られていない仕様の物も存在します。
なぞの多いビンテージ衣料ですが、奥が深く、そこが面白いところでもあります。
以上、第二次世界大戦中(1942年~1945年) 501XXの紹介でした。
この続きは、デニム雑学⑥+αで記載しています。