先日の聾唖婆さん、ここ3日ほど、ほとんど居室から出てこなかった。
いわゆる「籠城」である![]()
食事も、食べたり食べなかったり![]()
オムツパットの確認も、出来たり出来なかったり![]()
こちらが何とか声をかけても、「シッシ」と追い払われることもしばしば![]()
ところが――。週3回勤務の、あるオジサンが出勤してくると、様子が一変する。
満面の笑みで迎え、声にならない声で、「元気だった〜?」と、嬉しそうに話しかける![]()
オジサンも、相手には全く聞こえていない大きな声で、「元気だったよ〜
」と答えながら、
婆さんの頭をナデナデ![]()
婆さんは、こぼれんばかりの笑顔![]()
このオジサン、
50代半ば。中肉中背で背が高く、パッと見は「オジサン」というより、まだまだ「お兄さん」に近い。
初任者研修を取ったばかりの、介護職としてはド素人。
そして、とにかく
声がデカい![]()
敬語も、ほぼ使わない![]()
「〇ちゃん、どうしたの〜?」
「明日、一緒に帰ろうね〜」
「あぶないよ〜」
「こっちおいで〜」
……ほぼご法度の赤ちゃん言葉である![]()
しかも、エリート介護職なら絶対にやらないようなことも、平気でやる。
利用者さんの頬を両手で挟んで、「元気だった〜?」と、むにむに揺らしたり![]()
小柄な婆さんを、お姫様抱っこしたり![]()
(さすがにこれは注意した
)
そんなオジサンなのだが――。
とにかく、気が優しい![]()
なににつけ、気づきが優しいのだ![]()
だから、周囲もいろいろ大目に見ている![]()
そんなオジサンが出勤する週の3日間。
婆さんは、実に安定なのである。
居室に籠城しない。
ご飯を食べる。
お風呂にも入る![]()
何より、トイレ誘導やパット交換にも取拒否がないのだ![]()
そして面白いのは、
普段「シッシ」と追い払っているスタッフに対する態度まで、
なぜか柔らかくなること![]()
どうやら、
恋敵を警戒するタイプでもないらしく、
オジサンが他の利用者さんやスタッフとワチャワチャしていても、
婆さんはニコニコ![]()
まるで、
「良きにはからえ」
とでも言っているかのようである![]()
独占欲無し。
嫉妬もしない。
ただ、オジサンがいると機嫌がいい![]()
そして、オジサンがいなくなると――
また、籠城の日々である![]()