耳が聞こえない婆さんがいる。(利用者様をあえて婆さんと言う事を許してほしい)
先天性の聾唖とのことだが、筆談を面倒がり、手話はもっと面倒がる![]()
身振り手振りはあるが、いつもうなり声で何かを伝えようとする![]()
「トイレ」「大丈夫」「ありがとう」あたりは、な〜んとなく分かる。
ところが、それ以外になると……さっぱり分からない![]()
こちらが「ん?」という顔をしたり、
もう一度言ってほしくて口元を見ながら「もう一回?」と口パクすると、
「もういい💢」と、怒ってシッシッと手で振りきられる。
そんな婆さんの訴えを、あるスタッフがどうにか解読した。
「赤ちゃんがいるって?」
「双子?」
「世話をしなくちゃ?」
「乳母車がほしい?」と、次々に解読されていった。
家族面会時に確認したら、家族もちゃんと聞き取れて、「そんなこと言ってるの?」「認知症が進んだのかしら?」「子供なんかいないわよ」と、とても驚いていた![]()
この婆さんへの対応は、職員によって見事に明暗が分かれる。
普段、認知症の方への傾聴がとても上手なスタッフがいる。主に介護福祉士のスタッフで、ちょっとした拒否や訴えなら、傾聴と「魔法の言葉」でチョチョイとかわしてしまう。入浴拒否してたって、上手に浴室に誘導する![]()
いわゆるエリート組![]()
ところが、この婆さんには、このエリート組の技が通用しない![]()
何を言っているのかが解読できても、その後はシッシッ👋
一方、普段はちょっと問題があったり、
知識や経験がまだ浅かったり、傾聴よりも自分のスタイルで対応するスタッフがいる。
ヘルパー2級だったり、初任者研修を取ったばかりだったり。言わば我流組![]()
この人たちは、なぜか婆さんにシッシッされないのだ。
むしろ、婆さんが心を許している。
ある日のこと。
傾聴の得意なエリート社員組しかいない日勤の日。婆さんは朝食を拒否。昼食も拒否。そのまま居室に籠城。ところが、夜勤の我流スタッフが来た途端、
「昼間、食べ物に毒を盛られそうになった」と訴え、その我流夜勤者が夕食を提供すると……ぺろりと完食😂
なんなんだ、この明確な人選は![]()
この事実を発見してからは、エリート社員組と、我流組をバランス良く勤務に入れることで、なんとか婆さんとの関係をつないでいる。
ちなみに、この婆さん、実はシッシッだけでは済まない。
大声を出したり、叩いたりすることもあり、易怒性が強い。ただでさえ鬼瓦のような顔で普段から怖いのに![]()
あまりにも対応が難しい時のために頓服でリスペリドンを服用できるよう、家族の許可も得ている。
つまり、「どうにもならないときの手段」は、一応用意されているのだ。
でも、誰もほしいと言ってこない。みんな、できるだけ飲ませようとはしない。薬で落ち着かせる前に、「まだ大丈夫」 「なんとかする」と、どうにか対応している。
そうそう、この婆さんには大きな変化があった。
入所した頃は、車椅子で移動していたはずが…。
今では、車椅子を乗り捨てて、フラフラしながらも歩く。手すりを伝い歩く。
歩けるようになったのは、すごいことだが、なんせ危ない。
だから当然付き添おうとするが……
シッシッ👋💢
「いやいや、お願いしますよ
」
仕方なく、だるまさんが転んだ状態で後につく😂
介護では、
「安全のために付き添う」というのは、正しい。
「傾聴する」のも正しい。
「安心してもらう」のも正しい。
「できるだけ薬に頼らない」という考え方も正しいとする傾向だ。
でも、正しいことを並べただけでは、どうにもならない人もいる。
この婆さんがそれだ。
介護って、正解を知っていることより、その人にとっての正解を探すことなのかもしれない。
……な〜んて、ちょっと偉そうなことを思ったりする![]()
まあ私は今日も、
「何言ってるか、さっぱり分からん😂」と、婆さんにシッシッされながら、
だるまさんが転んだ状態で後からついている😭