カール・アレン・ジャズ・クリニックその1 | なぜ牛丼屋でジャズがかかっているの?

カール・アレン・ジャズ・クリニックその1

 日々ジャズを教える立場の私、一流の指導の現場を見るのはとても勉強になる。
 ということで、先日国立音大で行われた<カール・アレン・ドラム・クリニック>に行ってきました。カール・アレンは偉大なドラマーであり、かつ、ジュリアード音楽院のジャズ科主任教授。やはり偉大なピアニストで、かつ、国立音大ジャズ科の主任教授である、小曽根真さんが通訳して下さる、となれば行くしかないでしょう。

 一般に無料開放ということで、年齢を問わず、大勢のドラマーらしき人たちが集まっていた。しかし!内容はドラム・クリニックではなく、バンド全体のクリニックだったので、実はより多くの楽器の人に、とても有用な内容でした。

 また、わたしは、彼が<ここの場面ではこのシンパルを使って、ハイハットのタイミングをもっとこうして・・・>みたいな具体的なドラムの技術の話をするのかと想像していたが、技術的な話はほとんどなし。もっと、ジャズに関する哲学というか価値観に関わる話が中心だった。

 その理由についていても、彼は触れていて、<技術的な話には、ついて行ける人とついて行けない人に差が出る。まだ1年しか楽器をやっていない人にも、10年やっている人にも等しく理解できる話をしたい>ということでした。
 というわけで、今回のクリニックは、楽器をやっていない、リスナーとしてのジャズファンでも十分に理解でき、しかも楽しめる内容でした。

 具体的には、国立音大のモデルバンド3つがクリニックを受け、それぞれの演奏について、カールが40分ずつくらい丁寧にコメントする、という内容。長くなりますが、とても良い内容だったので、全てについて、わたしが特に印象に残った彼の言葉を書いておきます。

 1.TS、TBのクインテット 曲は“Four”(Medium Swing)

<僕はねえ、ジャズには二つ大きな条件があると思っている。メロディーやリズムがDanceしていることとSing(歌っている)こと。いつも、自分のフレーズやリズムがダンスしているか?Singしているか?ということを心がけてほしい。>

<音楽の三大要素はメロディー・リズム・ハーモニーだと言われている。だけど、僕はもう一つ、大切な要素を付け加えたい。それがSpace(空間、間)だ。そのスペースがあることによって、フレーズは呼吸をする余裕が与えられるし、リスナーも呼吸をする時間がとれる。音楽にリラックスが産まれるんだよ。スペースは、Notes(音)と同じくらい重要です。

<(フロントのふたりに)君たちはとてもかっこいいフレーズをたくさん知っているようだ。でも、ちゃんとリズムセクションを聴いている?もしかして、自分が普段ひとりで練習したフレーズをリズムセクションと関係なく出していない?
 ジャズは、reaction(反応)であり、 conversation(会話)が命だ。もっともっと、リズムセクションを利用し、巻き込み、会話をしようよ。>

<リズムに関しては、バンドのひとりひとりが自分で責任を負わなくてはならない。しかし、バンドで特に大事なのは、ベースとドラムのコンビネイション、信頼関係だ。
 (ベーシストに)君は、このドラマーのフェイバリット・ドラマー5人をあげられる?(ドラマーに)君は、このベーシストのフェイバリット・ベイシスト5人をあげられる?また、彼がどんなデザートが好きか知っている?
(二人が答えられないでいると)ベーシストとドラマーは本当に、お互いのことを全てわかり合っていなければいけない。僕は一番良く一緒になるクリスチャン・マクブライトのことは音楽上のことから、私生活まで、何でも知っているよ>

<みんなの演奏は最初から最後までちょっとのっぺりしていたね。もっとDynamix、Texture(構成)、Timber(音色)、 Register(音域)にも気を遣ってみよう。たとえば、ピアノが4小節バッキングしたら、次の4小節は休んで・・・という風に試してみよう。(実際やってみると、フロント楽器はスペースが産まれて、ぐっと良く聞こえる)ほらね、ちょっと休みをいれることで、ピアノがまた入ってきた時に新鮮な驚きが産まれるでしょう。こういうことを色々試してみると良いよ。>

<全ての複雑なことは、Fundamental、Basicなことの積み重ね、Simpleなことの組み合わせでできている。だから上級者も、初心者も常に、“基本に立ち返る”ことが重要なんだ>

 うわー、クリニックの内容が濃すぎて長くなった。この続きは次の項で。

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6/7(火)Blue Note Tokyo 
Open5:30p.m. Start7:00p.m.

<守屋 純子セクステット>
岡崎 好朗(トランペット)、近藤 和彦(サックス)、片岡 雄三(トロンボーン)、納 浩一(ベース)、小山 太郎(ドラムス)
<ゲスト>
阿川 泰子、平賀 マリカ、メグ(ヴォーカル)、寺久保 エレナ(サックス)

予約受付中!詳細は以下まで。http://www.bluenote.co.jp/jp/artist/junko-moriya/

6/22(水) 高田馬場 "Hot House" 21:00-- tel 03-3367-1233
<Junko Moriya Duo> 
日本一小さいライブハウスにて、CHAKA(V)さんとのデュオ、CHAKAさんはホットハウス初出演。素晴らしいヴォーカリストです!