2022.4.15 絢sroom アルバム巡り「9th.Blue」によせて
2022.4.15 絢sroom アルバム巡り「9th.Blue」によせて
2013年にリリースされたこのアルバムと楽曲を語るに、「ブルームーンカルテット」との出会いなくして語れないので、今回は彼らの音楽との出会いを振り返る。
2011年の秋、当時東北ツアーのオーガナイザーをしてくれていた愉快な紳士テリーの車に乗って、私は二度目の東北ツアーをしていた。中盤でテリーと大の仲良しであり、私の友人でもある東京のピアノ弾き歌いリュウちゃんと合流。岩手で一緒にライヴをした。
翌日は移動日でお休み。3人で車に乗り込み、次のライヴ開催地である仙台へ向かっていた。
車内ではあらゆる音楽が流れ、男たちが音楽話に花を咲かせていたが、私は移動日をいいことにノーメイク&ノーブラで寝巻のような恰好をして後部座席で丸くなってひたすら眠っているかぼーっとしていた。(失礼な奴である)
「これからライヴを観に行こう!素晴らしいバンドのライヴが今夜仙台であるのさー!」とテリーは言った。なにやら「バンバンバザール」のメンバーと「ブラックボトムブラスバンド」のメンバーで構成された
「ブルームーンカルテット」というバンドらしい。無知な私は眠たい頭で「バンド名にBが多いなあ」と思った。どのバンドも知らなかったけれど(世のたいていのことを私は知らない)、テリーやリュウちゃんの昔馴染みで大絶賛のバンドということだ。
移動中テリーは彼らに電話をかけて「矢野絢子という素晴らしいシンガーソングライターを連れて行くから、ぜひ一緒にセッションに参加させてくれ!」と頼んでくれた。
私は当時、自分と同じ弾き語りの人たちか、歌物のバンドのライヴしかあまりみたことがなかったので、どんな音楽を演奏するバンドなのか、なんの想像もできずに会場である「ピーターパン」という小さな店にたどり着いた。
狭い階段を上ると、古くて小さくて居心地の良さそうなお店があった。年季の入ったカウンターの後ろ壁一面にレコードが収まっていた。
ちょうどブルームーンカルテットの4人がリハーサルをしているところだった。
普通なら遠慮するけれど、テリーもリュウちゃんも旧知の仲ということでドヤドヤと押しかけ、挨拶をした。店主のおじさんが、並べたソファーひとつひとつに香水を振りかけているのがなんか素敵だなと思って見ていた。
コルネットというミニサイズのトランペット、ウクレレ、ウッドベース、スネアドラムの4人。そんなスペースに収まるの?!というくらい狭いスペースに楽器と身体を収めていた。マイクはMC用?が一本、すべて生音である。
いい匂いのするソファーに座って、彼らの音に静かに耳を傾けたとたん。。。。。
私は人生で初めてといっても過言ではないある種の感動を体験していた。
音色が!素晴らしいのだ!こんな豊かな音楽初めて聴いた!!
歌詞も声もないのに、すべての楽器が歌っているようだった。4つの楽器がおしゃべりをしているようにあっちへ行ったりこっちへ行ったり色んな風景を描いて、空間隅々まで使って遊んでいるようだった。
「何この音楽!!!!!!!!」
度肝を抜かれて唖然としている間に、メンバーがアンコールセッションのリハーサルをしようと私たちに声をかけてくれた。「よろしくお願いします」と、これ以上ないくらいの狭い空間に私とピアニカを持ったリュウちゃんが奇跡的に収まった。
はじめましてのセッションだから誰でも知ってる曲がよいだろうとテリーが提案したが、私はあまりカバーを知らないので唯一知っている「クレイジーラブ」を提案すると、ウクレレの富永さんが「オリジナルもやろうや」と言ってくれた!当時作ったばかりの「汽笛は泣いて」は4つのコードの繰り返しなのでその曲を提案すると、魔法のようにするすると彼らの演奏が始まった。
「こんな幸福な音楽があるだろうか、そしてその中に私の歌が乗っている。こんな幸福な事件があるだろうか」
最後まで夢の中にいるような気持ちで、その豊かな夜を味わった。
これが、私とブルームーンカルテットとの出会いである。
勿論そのあと私は「ブルームーンカルテット」に猛烈アタックをした。「バンバンバザール」のライヴにも行ったし、「ブラックボトムブラスバンド」のライヴにも行った。(奇しくも両方とも富永さん、黄さんが各バンドから脱退するさよならコンサートだった。間に合った!)
共演のオファーをして、自分のライヴやツアーなど一緒に回ったり、時には彼らのライヴの現場に同行させてもらったり。朝まで一緒に酒を飲んだり、その「音楽の秘密」を知りたくて知りたくて、色んな話を聞いて、色んな音楽を教えてもらい、現場の音作りを見せてもらい、たくさんたくさん学んだ。どれもこれも今まで知らなかったあたらしく魅力的な世界だった。
私は本当に「音楽」のことを何も知らないんだ!という恥ずかしさと、「音楽」を通して彼らのように人を笑顔にしたい、と強く思った。
シンガーソングライターでも、歌うたい、でも物足りない、「音楽」そのものに私はなりたいと、この時から強く強く思うようになった。
そして、彼らから教えてもらった音楽の刺激に影響を受けた楽曲がどんどん出来上がっていった。もちろんレコーディングは彼らとやりたいと考えはじめていた。
ところが、当時私は平井ペタシ陽一のドラムとシマフミヴァイオリンのトリオに心酔しており、色んなところでライヴをしていた。このトリオは私の音楽にいつでも、本当に完璧に寄り添ってくれる音楽。何があっても、どんな方向へ行っても、ピタリと寄り添ってくれる魔法のような演奏をしてくれる。最高に相性の良いトリオ。
元々はこのトリオでレコーディングをしたいと思っていたところにブルームーンカルテットと出会ってしまったので、私はすごく悩んだ。
双方全く違う性質だからだ。
そんな時、またしても富永さんが「全曲全員でやったらええやん」という驚くべき解決策を提案してくれた!
というわけで楽曲も揃った。メンバーも揃った。エンジニアは7枚目からのお馴染み谷澤一輝モーキさん。
場所も前回と同じ小淵沢の星と虹スタジオで。
雪の小淵沢にて、2013年1月30日から5日間のレコーディングが始まった。
レコーディングのエピソードは配信ライヴで詳しく黄さんとシマフミと振り返りたいと思うが、本当に素晴らしいレコーディングだった。
ペタシ君と木村おうじ氏のツインドラムも最高のパズルみたいに過不足なく遊び心満載でお互いの持ち味を引き出していたし、ブルームーンカルテット丸ごとの最上級の音色とグルーヴに、私たちトリオの演奏が混ざり合い、その上で歌うことが出来るだけで、最高に幸せだった。しかも私のオリジナル曲よ!!!ww
本当にクレイジーにひたすらツアーを回りまくっていたこの頃に、彼らの音楽と出会えて、古き良き音楽(私にとっては目新しい)の素晴らしさを知ることができたことは、私の音楽人生の中でもトップクラスに幸福な出来事だった。
あの頃は自分があまりにも未熟に思えて、長い間苦しい時期もあったが、今はそれも乗り越えて、ある意味いい感じに力も抜けて「私にしかできない音楽」と「ザ音楽」のはざまで気持ちよく生み出している。
そしてやっぱり今でも「ザ音楽」の塊みたいな彼らは、更に進化をし続けながら、日本中でハッピーに演奏を続けている。また観に行きたいな。
そんなあれこれに感謝をこめて、10年越しに今も私の音楽制作やライヴに力を貸してくれているブルームーンカルテットのトランペッター黄さんと、そんなあれこれをいつも全部そばで支えてくれているシマフミヴァイオリンと、名盤「Blue」の13曲振り返ります~。
さてどんな音色が生まれるのか。こうご期待!
絢sRoomでお待ちしております💛
★今回の演奏曲目と絢s.Q(今私はこの曲に何を問いかける?)★
1 ひかりのすあし(2012年作)
絢s.Q~「私」の命が終わったあと「魂」の「愛」はどんな形で残る?~
2 スモーキーワインブルース (2012年作)
絢s.Q~「私」が愛してやまない「味」はどんな「風味」?~
3 天使の歌 (2012年作)
絢s.Q~「天使」は「私」に何を与えてくれた?~
4 Birth (2012年作)
絢s.Q~いつでも、何度でも「私」に生まれることができるなら?~
5 モノクロームダンス (2012作)
絢s.Q~「それ」が最初に生まれたところに「なに」がある?~
6 狂った神々 (2011年作)
絢s.Q~「私」が「待っている」または「持っている」ものは?~
7 ねばーせいぐっどばい (2012年作)
絢s.Q~「私」の「次の物語」をどう描く?~
8 おけら (池マサト作)
絢s.Q~「全て」を手放したとき、何が残る?~
9 涙うちぎわで (2012年作)
絢s.Q~心の中の「私」は「私」になんと言っている?~
10 人生よ上等だ (2012年作)
絢s.Q~どんな人生でも、最後まで握りしめているものはなに?~
11 ギザギザ (2012年作)
絢s.Q~「私」を心底「夢中」にさせるものは?~
12 遥かなる道の上で (2012年作)
絢s.Q~その先に、または後ろに何が見える?今ここにあるものは?~
13 青い月夜に (2012年作)
絢s.Q~色形がなくても、いつまでも残り続けるものはなに?~
ご購入は下記から!(2022年4月29日(金) 23:59 までアーカイブあり)