2022.1.21 絢sroom アルバム巡り「7th.いちばん小さな海」に寄せて | 矢野絢子オフィシャルブログ「矢野絢子の生態系観察所(仮)」Powered by アメブロ

2022.1.21 絢sroom アルバム巡り「7th.いちばん小さな海」に寄せて

2022.1.21 絢sroom アルバム巡り「7th.いちばん小さな海」に寄せて

~前回までのあらすじ~
 2008年にシングルマザーで男児を出産した矢野絢子。出産後1年間で制作した曲をベースに6枚目のアルバム「星カンムリ」を嶋崎史香ヴァイオリンとのデュオで制作。


 乳飲み子を抱え、音楽活動にさらに大きく火が付き「歌で生きる=歌で稼ぐ!!」となり、地元のライヴハウスファミリーの一員からひとりのミュージシャンとしての自覚が芽生えはじめる(おそい!!)。


 明日はどっちだ!どうなる絢子!飛び出せ絢子!~


 今回巡るこのアルバム「いちばん小さな海」は今から11年前の、2011年1月16日にリリースされている。

 前回のアルバム「星カンムリ」が矢野絢子の「音楽家としての自立心やっとついたぜアルバムゼロ枚目」としたら、このアルバムが今に至る私にとってのある意味自立した音源制作の1stアルバムになる。
 
 というのも、それまでのライヴ本数が年間平均60本前後だったのが、出産した翌年の2009年から激増。2010年には120本、2011年には年間138本のライヴを全国各地で行っている。

 その壮絶なオラオラツアー生活から得たもの、出会った音楽、人、を惜しむことなく自分の表現欲求に任せ、構築した最初のアルバムだと私は自覚している。


 これまで、メジャーアルバム以外は歌小屋の2階で生音一発録音&歌小屋のメンバーで制作していたのだが、このアルバムから歌小屋を飛び出し東京のライヴハウス「月見ル君想フ」のエンジニア谷澤一輝に高知まで来てもらい、高知のグランドピアノのある練習スタジオを2日間借り切ってのレコーディングになった。

 参加ミュージシャンは嶋崎史香ヴァイオリン、そしてゲストギターとして神戸で出会った歌うたいジーナに1曲、数曲を遠隔録音でジーナからの紹介でベーシストてっど氏とパーカッショニストタカシ氏のみ。

 あとは、シマフミヴァイオリンと自分の持っているオモチャの楽器やアコーディオン、町の雑踏や自然音などを録音して重ねてつくっている。
 


 今も、私の中で「音源制作」は、「なに」を「どこ」で「どうやって」創るかよりも、

 

  「誰と」創るか

 

が最優先事項だ。
 

 こうしてこのアルバムを振り返ってみると、当時の私が音楽的に信頼関係を築いていたメンバーが誰なのかよくわかってとても興味深い。

 

 そうしたメンバーとも慣れあうことなくいつでも「実験的」に「化学反応」を求めてアルバムを作っていたいんだなということも。

 

 クオリティよりもアイデアと情熱!という感がもう恥ずかしいほどに露わなこのアルバム。

 まあ昔のアルバムを振り返ると、録り直したい箇所は山の如しとなることは否めない。

 

 しかし、なぜか生まれて初めて「ゼロから自分だけのアンテナ(歌小屋ではなく)で、残るものをつくる」という興奮が音にも曲にもフレッシュに残っている作品だなと思う。

 

 自分の中に湧いてきたインスピレーションをエンジニアさんや共に音を重ねる音楽家たちに相談し、共にその場で作り上げていく過程は、本当に楽しかった。

 

 アレンジャーもいない、プロデューサーもいない、現場で自らのセンスをぶつけてクリエイトする人しかいない中の制作は、いつも「私」を中心によくも悪くも回っていて、その責任感に押しつぶされそうになりながら、でもそうなるほどに助けてくれる周りの人たちのエネルギーに頼りまくって、「ひとりでは作り出せないもの」が、その瞬間瞬間で、自由に変わりながら出来上がっていく過程を楽しんでゆく快感を知った。

 

 その今もやまないワクワクが、このアルバムを聴くと、「ああ、ここから始まったなあ」と感慨深くうれしくなる。



 アルバムタイトルは、『寺山修司少女誌集』に掲載されている「一ばんみじかい叙情詩」からとった。


“なみだは にんげんのつくることのできる 一ばん小さな海です”


 この1行にガツンと打たれた。

 たった一人の人間のひとつぶの涙と、森羅万象の源である海。

 

 この途方もない広がりと、小さなひとつぶの同等が今も私を歌わせてくれている気がする。

 来月2月20日に行われる25周年コンサートタイトル「宇宙~sora~のひと雫」ともつながるなあ~。(とかいうてちらっと宣伝)




 収録曲も、今も歌うたびに「好きだなあ」と思わせてくれる曲たちばかり。(どんだけ自分好きなんだ) 

 ぜひこの機会にあなたの一粒に聴いてほしい。

   では、明日1/21(金)19:30より、絢sRoomでお待ちしております★(2週間アーカイブ有〼)
                                

  矢野 絢子







★以下今回の演奏曲目と絢s.Q(今私はこの曲に何を問いかける?)★

1 唄の舟(2010年作)
絢s.Q~今私の「舟」に「風」はどう吹いている?~

2 恋と盲目 (2010年作)
絢s.Q~その「恋」で「私」が隠したものはなに?~

3 消えた日 (2010年作)
絢s.Q~「私」はこの世界で何を感じ、味わうために生きている?~

4 夏の終わりに (2009年作)
絢s.Q~「私」は「何」を「誰」のせいにした?~

5 蒼い夕暮れからの手紙 (2010作)
絢s.Q~「今の私」から「未来の私」へどんな手紙を送る?~

6 窓辺のコーヒー (2010年作)
絢s.Q~冷めたものの中にしかない、温かさとは?~

7 想い出の翼 (2010年作)
絢s.Q~「記憶」には何の意味がある?そこから「今」に何を生み出せる?~

8 千年酒 (2010年作)
絢s.Q~いつの時代も「私」と「あなた」の間に寄り添っているものはなに?~

9 愚かさ故に (2009年作) 
絢s.Q~どんな愚かさを使って「それ」を創造してきた?~

10 まっすぐブルース (2010年作)
絢s.Q~「私」から「まっすぐ」見えるものはなに?~

11 一八〇〇秒の永遠 (2009年作)
絢s.Q~この「時間」はどこから、どうやって生まれた?~

12 足跡 (2010年作)
絢s.Q~これまでのすべての「足跡」に愛を平等に贈るには?~

13 Baby (2010年作)
絢s.Q~「私」の心の小さな箱庭で守られ続けているものはなに?~

 

 

 

 

以下当時のアルバムジャケット撮影オフショットより

王様とシマフミの生まれたてご子息とともに。か、かわいい!!!